1日目は、ムチウチ被害者の3通りの対応、非該当、14級、12級を学習しました。

さて、ムチウチ最難関である12級13号を獲得するために必要なことはなんでしょうか?
まず12級13号の絶対条件は、画像上の明らかな所見です。
医師や自賠責調査事務所がどのようにそれを確認しているのかを学びます。
この画像読影は弁護士先生が苦手とする分野です。
画像所見の確認方法、画像ソフトの使用方法を徹底的にマスターします。

「12級は難しいからねぇ・・?」 曖昧な対応は今日から必要なくなりました。

MRIの画像所見を確保する

MRIの画像所見?

矢状断、水平断を並列で表示しています。

まず画像分析ソフトを使って12級13号が見込まれる被害者の画像を表示します。
そして神経が圧迫されている所見を弁護士先生自ら探していただき、的確に指摘していただきます。
この一連の作業、画像ソフトの操作ができるまで、しぶとく特訓です。

12級13号の要件は、これらの画像所見に加え、その病変部から生じる、しびれ・痛み等の自覚症状の訴え、さらに病変部と矛盾しない神経学的所見、スパーリングテスト、腱反射、筋萎縮等を後遺障害診断書に落とし込むことです。

最後に弁護士先生自ら理想的な12級の後遺障害診断書を書いていただきました。
ここまでやればムチウチの全容を掴んだと言っても過言ではありません。

実務講座

文系最高峰の試験に合格した弁護士先生も今日は徹底的に理系を攻略しています。

弁護士の先生を対象に、交通事故外傷と後遺障害の実務講座を開催する?
不安でドキドキしながら始めた講座でしたが、3年目、4回を数えることになりました。

交通事故実務講座

今回のテーマは、外傷性頚腰部症候群、中心性頚髄損傷、肩関節の外傷、股関節・骨盤骨の外傷、
頸骨プラトー骨折、つまり膝関節の外傷、コットン骨折、足関節の外傷でしたが、主眼点は、ONISのソフトを使用してMRI画像を解読するところにありました。

特に、ムチウチでは、非該当とされるもの、14級9号になるもの、12級13号が認められる画像所見とは、この分別を徹底的に学習したのです。

ONISのソフトは、スクリーンに表示すると同時に、それぞれの弁護士がパソコン上で起動しています。
このソフトに非該当、14級、12級の画像を取り込んで、実際にコントラストや角度を切り替えて学習を続けたのです。

交通事故実務講座

外傷性頚腰部症候群、中心性頚髄損傷を例にとると、認定等級は、5、7、9、12、14級、非該当の6段階が予想されます。
そして、これらの等級は、MRIの画像所見と神経学的所見のレベルで左右されているのです。
もちろん、それらを見据えた上での症状固定時期の選択も重要な要素となります。

つまり、後遺障害に踏み込むには、MRI画像を分析する能力が必要とされているのです。
チーム110の5名の仲間は、Onis 2.5 Professionalのソフトで、14級、12級を分別することができる能力を身につけています。であれば、このノウハウは、交通事故に真剣に取り組む弁護士先生と共有すべきであるとの結論に至ったのです。

今回、実務講座に参加された弁護士先生は、ONISのソフトを実際に起動させ、15件のMRI画像や3DCTの解読作業を続けました。
あとは、経験則の積み上げで、理解がより深まります。
もう、ここまで進化しているのです。

3/1~2の土日、「第4回 法律家のための交通事故 実務講座」 を東京大手町で開催しました。
今回のテーマは、「実戦力を身につける!」 これが今回のテーマです。
研修内容の一部を報告しておきます。

(1)外傷性頚部症候群
ロールプレイ、被害者の後遺障害は非該当、14級9号それとも12級13号?
これまでのスクール型、座学研修と違い、弁護士先生には、ロールプレイに参加いただき、30分の模擬交通事故相談会を経験していただきました。

交通事故 実務講座

交通事故外傷の最大勢力は、なんと言ってもムチウチです。
被害者ファイルを参考にしつつ、質問を繰り返し、問題点を明らかにしていきます。
被害者役のチーム110が提出したMRIのCDもチェックしつつ、より深く探っていくのです。
傍聴の弁護士先生は、やりとりを聴きながら、被害者相談カルテを打ち込んでいきます。

このロールプレイの目的は、
①非該当か?
②14級9号は確実か?
③12級13号の可能性は?
上記の3つを確実に予測することです。

これより先に、参加の弁護士先生の左腕、上腕三頭筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋には、油性の赤マジックで、深部腱反射のポイントをマークしました。
それぞれ隣り合う先生の3点を打腱器で叩き、深部腱反射の測定法をマスターしています。

これまで多くの法律事務所は、「等級が取れてから、また来て?」 で、依頼者を追い返してきました。
今後、この手の法律事務所に被害者が戻ってくることはありません。
交通事故の専門家を名乗る以上、等級の確実な予測と、そこに至るまでの初期対応を万全としなければならないのです。

①非該当なのか、14級9号なのか?

□新車を購入して1年未満で修理費が150万円、こんな車に乗りたくない、新車にならないか?
□全損で現価が30万円、でも、この金額では同程度の中古車すら購入できない?
ありきたりの物損から始まり、
□過失割合に納得がいかない?
□治療が短期間で打ち切られるとの噂を聞くが、いつまで治療を続けられるのか?
□休業損害は、毎月、給料日に振り込んでほしい?
□この症状は、治療で治るのか?
□治らないとき、後遺障害が認められるのか?
□認められるとして、何級になるのか?
□等級が認定されたら、賠償額はいくらになるのか?
□賠償金は、いつ頃入金されるのか?
□本件の交渉を弁護士さんにお願いすれば、どれ位の費用になるのか?
これらが被害者の関心事です。

これに対して、相談を受ける弁護士の先生は、
□人身事故の届出を完了しているか?
□受傷から3カ月程度で改善が得られる症状なのか、神経症状が認められるのか?
□後遺障害が予想される症状なのか、であるなら症状固定の時期は?
□耳鳴りで、耳鼻科を受診しているか?
□現在の治療の内容に問題はないか?
□XP、MRIのチェック、画像所見が得られているか?
□治療先に問題はないか?
□整骨院、鍼灸院の施術に偏重していないか?
□休業損害の発生と、休業の見通し?
□過去にムチウチで等級認定を受けていないか?
先の質問に回答をしながら、これらの10のチェックポイントをクリアーしなければならないのです。
それも、30分以内で仕込まなければなりません。

聴き取りの方法もシッカリとあります。
Q 手指が痺れますか? →A いえ、痺れはありません。
こんな簡単なやりとりではなく、左右いずれかの頚部~肩、上肢そして手指に重さ感、だるさ感、軽いしびれ感はありませんか?と、丁寧に確認しなければなりません。

神経根症状

これは被害者自身でスパーリングテストを行い、神経根症状を誘発する簡易テストですが、「頚部をゆっくりと左右に屈曲してください。このとき、いずれかの手指に軽い痺れを感じませんか?」
このように確認するのがベストなのです。

痺れ等の神経症状が認められるときは、後遺障害14級9号の獲得が予想されます。
□整形外科・開業医における真面目なリハビリ治療を続けること、
□MRI撮影を終えていないときは、できるだけ早期に撮影を受けること、
□整骨院・鍼灸院では施術を受けないこと、
□受傷から6カ月を経過した時点で症状固定、後遺障害は被害者請求で申請すること、
□弁護士委任とすれば、保険屋さんから被害者に直接の連絡はなされないこと、
□静かな環境で治療に専念することができること、

これらを伝え、アドバイスとします。

MRI

治療先の主治医が後遺障害診断書に、「MRIにて、頚椎、C5/6右神経根の圧排を認める!」 このような画像所見の記載をしているのに、爺さん会からの等級認定通知書には、「提出の画像上、本件事故による骨折・脱臼等の器質的損傷は認められず、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えることは困難・・・?」 定型的な書面が交付され、非該当で後遺障害がバッサリ斬り捨てられることが頻繁にあります。

一体、どっちの言っていることが正しいのか?
爺さん会が顧問医に判断を委ねての結果なのか?
それとも、爺さん会の恣意的な認定なのか?
爺さん会が信用できる存在と思われないことも多々あって、法律家は大いに悩むところです。

メディカルリサーチ株式会社
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-22-13 虎ノ門秋山ビル2階
TEL. 03-6205-4033
画像診断・医学鑑定書・医学意見書などの医療調査サポートサービスで生命保険・損害保険・弁護士・法曹関係・調査会社をサポートするメディカルリサーチ

画像診断、医学鑑定書の作成では、上記のメディカルリサーチさんが先駆けですが、画像鑑定が8万円、意見書が25万円、鑑定書に至っては35万円、とてつもなく高額です。
そして、有力顧客が保険屋さんであることも、少し気になります。

これらに対応する必要から、エキスパート株式会社は、放射線科の専門医にお願いし、独自の画像鑑定システムを完成、法律家、弁護士に限定してクローズドスタンスで運用を始めています。
費用は、2万5000円からのスタートですが、訴訟に対抗できる鑑定書となると10万円以上となります。

しかし、どっちに転ぶか分からない画像の第一次分析に、高額な画像鑑定はためらわれます。

そこで、エキスパート株式会社は、1件、消費税を含み8400円で画像分析を行うことを決断しました。
放射線科専門医の指導の下、放射線技師の協力があり、この価格が実現したのです。
画像鑑定ではありませんが、Onis 2.5 Profesional のソフトを駆使しての画像分析ですから、異常所見を赤矢印で示して、具体的に指摘、シッカリとコメントします。

Onis 2.5 Professional

ONIS

ONIS 2.5 Professional is a powerful DICOM 2D/3D viewer, compatible with all modalities and all manufacturers. It can load any of the plugins, has support for multi-monitor configurations, can display images “on-demand” and more. This package is aimed at professional radiologists or other medical imaging professionals.

発注から原則的には、1週間で画像分析レポートを送達します。
画像分析の結果、上位等級の獲得が予想されるときは、放射線科専門医に画像鑑定を依頼し、画像鑑定書を新たな医学的所見として異議申立を実行することになります。
証拠に裏付けされた異議申立で、成功の確率を押し上げます。

①交通事故証明書
②傷病名が記載された治療先の診断書
③異議申立では、後遺障害診断書と等級認定通知書のコピー
④MRIおよびCTの画像が収録されたCDもしくはDVD
⑤当該被害者の同意書

これらの書類と、8400円の現金書留を添えて申し込んでください。
近日中に、エキスパートのHPにアップします。

8回にわたって続きましたシリーズも今日で一応の完結です。
高次脳機能障害は患者ごとに微妙に症状・程度が違うため、完全な分類は困難ですす。
しかしこのシリーズにて典型的な症状をチェックをすることで、等級申請を視野に入れた障害の全容を逃さず把握することができると思います。

何か異常があっても回復の期待から家族は過小評価しがちです。
そして微妙な症状は医師でさえ見逃します。
したがって相談を受ける弁護士は言わば最後の砦です。
絶対に見逃してはなりません。

(8)最後は四肢の「脳性麻痺」について

☐車椅子、杖、装具の使用状況は?
☐片側の足や手をよくぶつける。片側の腕や足にキズ・痣が絶ええない?
☐火傷をする。お風呂に入る際、手や足の左右で感じる温度が違う?
☐自力で排便・排尿ができない?
□尿漏れや逆におしっこがでない?

車椅子や装具の使用状態から、左右の上肢、下肢の運動麻痺をチェックします。
さらに細かく、肩・肘・手首・指、股関節・膝・足首・足指のどの関節が動かないか、麻痺の程度、「完全に動かない~やや動く」 「硬直して動かない、または力が入らない」 も把握しなければなりません。

また麻痺は触覚の低下、逆に過敏もあります。
右腕の触覚が低下したため、よくぶつけ、痣が絶えない被害者がいました。
温冷感の低下も困った症状です。
熱湯に触ってもすぐ手を引込めないため、常に火傷の危険性があるからです。

排泄やED障害については本人から言いづらいものです。
これは少し時間をおいてから確認すべきでしょう。

麻痺を整理します。

脳性麻痺

この表で類別後に、さらに程度と兆候が診断され、等級審査の判断材料となります。
完全麻痺  力がまったく入らない。
不完全麻痺 一部力が入る。
痙性麻痺  麻痺筋の緊張が亢進している。
弛緩麻痺  麻痺筋の緊張が低下している。

運動麻痺は障害審査の重要な要素です。
車イス(1~2級判断)や装具(一肢につき8、10、12級判断)の使用状況で即等級が判断できます。
しかし触覚や温冷感の麻痺は見逃されやすく、また判断される等級も12級相当で止まっています。
これらを他の記憶障害などに含めて判断するのか、併合するのかは、受傷部位や程度・状態から判断されているようです。

公開中の映画、「抱きしめたい」 

現在、公開中の映画、「抱きしめたい」 で北川景子さんが演じる障害者のつかささんは、交通事故で高次脳機能障害となり、左半身の完全麻痺で車イス使用を余儀なくされました。
また、記銘力の低下、短期記憶障害で新しいことを覚えることが苦手になってしまったようです。

映画は北海道が舞台で、実話が原作となっています。
このように障害が重くてもハンデを乗り越え、結婚・出産を果たし普通に生活している被害者さんもたくさん存在しています。
最後に、障害者のみならず健常者もこの障害を知ること、より理解することが必要と思います。

(7)味覚・嗅覚・めまい・ふらつき

 ☐味がついているのに大量に醤油をかける?
☐事故後、嫌いで食べられなかった魚介類が食べられるようになった?
☐足元にガソリンがこぼれているのに、ライターで着火してタバコを吸おうとする?
☐腐った果物でも、平気で食べ続ける? 

これらは、実際に担当した被害者に見られた症状です。
ガソリンの強烈な臭いを感じない、腐っている食物の臭いや味が理解できない?
大変危険な障害と言えます。
味覚と臭覚の異常は、多数例で併発しています。

味覚・嗅覚は、前頭葉に損傷を受けたときに失われる感覚です。
また、頭蓋底骨折から嗅覚、味覚、視覚、聴覚に障害を起こすこともあります。
機械で例えるなら、脳本体の損傷では、感覚を認識する回路の故障と言えます。
神経損傷では、神経伝達が絶たれたことを原因とします。
つまり、ケーブルの断線に該当します。

高次脳機能障害の被害者で、これらを多数経験しています。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感が正常か、すべてチェックする必要があります。
該当する障害について眼科、耳鼻咽喉科、神経科にて受診、検査を受けることになります。
回路の故障かケーブルの断線か、原因の特定は脳外科ですが、臭いがしない、味がわからないといった障害の有無、程度の検査と立証は、それぞれの専門科になります。

☐まっすぐ歩けず、蛇行している?

脳障害疾患

ジョーは、ボクサー特有の外傷性脳障害疾患、パンチ・ランカーで蛇行歩行となります。

☐めまいを訴える。なんでもないところで転倒する?
☐頭痛に悩まされている?

脳幹出血の被害者でめまい・ふらつき等、運動機能の障害となった例を経験しています。
また後頭部、小脳の損傷では平衡感覚の喪失、運動神経の低下が現れます。
頭痛は損傷の部位に関わらず、多くの高次脳機能障害の被害者にみられる自覚症状です。

ちなみに等級認定では、記憶障害や注意機能障害の評価にこれらの症状を含めて総合的に等級判断するときと、嗅覚・味覚障害、めまい・ふらつきなどを12級相当として高次脳機能障害等級に併合するときがあります。

これは前述のとおり、脳の損傷の一環か、別部位の受傷かで併合適用の判断となります。
実際問題として、併合か否かは、総合的に症状の程度から判断していると考えています。

(6)情動障害、人格変化

これも前日の注意・遂行能力の障害に同じく、元々の個性を考慮しなければなりません。
性格が怒りっぽい人やわがままな人もいるので、やはり家族から聞かなければわかりません。
些細な変化では主治医でも把握できないのです。

☐些細なことでキレる?
☐幼児に返ったように行動・発言が子供っぽくなった?
☐人前で着替えを始めてしまう?

「易怒性」と言って多くの被害者で経験しています。
理由なく不機嫌になる人もおりますが、多くは電車で人の声が大きいとか、テレビのニュースの内容が気に食わない程度のことで、いつまでも文句を言い続けています。
通常は理性で抑えられるようなことも我慢できないようです。

幼児退行は認知症患者に多い例ですが、事故後、30歳になるいい大人が部屋をぬいぐるみで一杯にしたり、家族に甘えたりわがままを言うようになります。

羞恥心が低下する、感情を抑えられずにすぐ泣く、気に入らないと物にあたる、これらは「脱抑制」に分類されます。
理性で抑えることができず、より本能的になってしまうようです。

情動障害、人格変化

☐毎週のようにゴルフをしていたのに、家にあるゴルフクラブに見向きもしなくなった
☐明るくよくしゃべる人だったのに、無口で暗くなった
☐いつも疲れていて家でゴロゴロ、昼間でも居眠りが多い

「性格変化」は文字通り性格が変わってしまうことです。
久々に友人が訪ねてきてもそっけなく、友人は「人が変わった?」ように感じます。
私の経験では性格が陽気になった例はなく、多くは陰気、人見知り、悲観的になる傾向でした。

極端に疲れやすい。
これは肉体的な疲れというよりは精神的な疲れです。
「易疲労性」に分類されます。
この障害により職場や学校への復帰が困難となります。

情動障害、人格変化

(5)注意障害、遂行機能

注意障害と遂行能力障害の兆候は重なる部分が多く、多くの場合、併発します。
障害ではなく、そもそも飽きっぽい人、要領が悪い人がおります。
元々の能力、性格かもしれません。
やはり事故前後の比較が必要で、家族の観察を聞かねば判断できません。

注意障害

☐仕事を始めてもすぐ、ボーっとしてしまう。 集中力がもたない?
☐お皿を洗っている途中で、テレビを観始めてしまう?
☐窓の掃除をすると、ずっと同じところを拭いている?

注意障害とは集中力が極端に低下します。
したがって脈絡のない行動にでる、会話もまとまりがなく、話が飛びがちです。
同時にいくつかの作業を進めることができなくなります。
また逆に1つのことに固執してしまうこともあります。
これでは、仕事や勉強も長続きしません。

遂行機能

☐旅行の計画、段取りが立てられない?
☐買い物の段取りが悪く、売り場を行ったり来たりして何倍も時間がかかる?
☐家族に促されないと病院に行かない、薬を飲まない?

事を計画すること、効率よく処理すること、最後までやり遂げることができません。
注意障害に同じく、同時に2つの作業を進めることができません。
児童で典型的な例を経験しています。
「コップを取ってきて!」 1つの作業を頼めば問題ないのですが、「コップに牛乳を注いで、もう1つはジュースを注いで持ってきて!」 と頼むと、何もできずに固まってしまいます。
このように作業が重なると脳の処理が追いつかなくなるのです。

また「自発性の低下」 と言って自ら行動する意欲が失われます。
お腹が空いているのに、家族が配膳しなければ食事をしないでずっと待ち続けます。

(4)視覚認知機能、失認、失行
Q 歩いていてよく左肩をぶつけませんか?

半側空間無視

左目が見えないのではなく、左目に映る映像を認識できない状態です。
これを半側空間無視と呼んでいます。
左半側空間無視では、圧倒的に左側に問題が生じます。
通常、人は眼に映った情報を脳で解析しています。
しかし、脳の解析システムが故障することにより、左眼に映るものが認識されない状況に陥るのです。したがって、被害者本人には、見えていないことすら自覚できません。
コブクロを例にすると、ギター奏者しか見えない状態となるのです。

こんな兆候がないか、家族から聞き取る必要があります。

□食卓におかずを並べ、食事を始めても、右半分のお皿しか箸をつけない?
□片側から話しかけられても反応せず、片側に人が立っていても、その存在に気がつかない?
□家の絵を描かせると、片側半分だけしか描かない?

半側空間無視

□リンゴをピックアップするように指示をしても、中央から左側のリンゴを見落とす?

Q 右手を出してと言われても、左手を出す、よく左右を間違えませんか?
左右の側頭葉のいずれかが損傷した被害者で数例、経験しています。
左右の区別が定かではなくなり、よく右と左を間違えます。
これは、左右失認と呼ばれています。
些細なことと思われますが、この障害により、様々な場面で判断能力が低下します。

治療先で頻繁に通院している病院で、トイレに出かけます。
トイレから出て、1回、廊下を曲がると、元の場所に戻って来ることができません。
右側頭葉の障害では、自分の位置に混乱をきたす空間認識能力の低下がよく起こります。

Q 主治医の顔、もしくは新しく会った人の顔を覚えられないなどありますか?

顔を覚えことが苦手のレベルでは済まない症状のことを相貌失認と呼ばれています。
相貌失認では、人の区別だけではなく、笑っているのか、怒っているのか等、表情を読み取る観察力も失われることがあります。

Q 箸やスプーン、歯ブラシが使えなくなる、いつも使っていた電気器具の使用法を忘れてしまった?

日常の動作がスムーズでない、今まで使っていた道具が使えなくなる障害を失行と呼びます。
□着衣の動作がぎこちない、
□スラックスを逆にはこうとする? さらに、そのことに気づかない?
□愛用していたカメラで写真を撮ることができない?

ご家族から色々エピソードを聞き出します。

 (3)記憶障害

Q 昨夜、夕食は何を食べましたか?
事故以来、物忘れがひどくなっていませんか?

高次脳機能障害患者の80%に記憶障害があると報告されています。
それは昔のことが思い出せない逆向性健忘と新しいことが覚えられない前向性健忘に大別されます。

逆向性健忘とは記憶喪失の一種です。
前向性健忘とは記銘力、そもそも物事を覚える能力の低下です。
さらに、直前のことも覚えることができない、ワーキングメモリーの喪失も少なくありません。

Q 家族全員の名前、主治医の先生の名前、飼っているペットの名前が言えますか?

すらすら言えて当然の質問です。
少し考え込んだり、間違ったりする? これは単なる度忘れなのか、家族の観察・判断を聞きます。

高次脳機能障害-記憶障害

Q 病院への通院日や外出する日を約束しても、単に、忘れていたではなく、まったく約束自体を覚えていないことがありますか?

口頭での約束、これらが単なるうっかり忘れなのか、記憶にとどめていないのか。
また1時間前の会話の内容をまったく覚えておらず同じ質問をしてくる。
このような症状について同じく家族から具体的なエピソードを聞きます。

Q 近隣でも迷子になる、主治医の顔、もしくは新しく会った人の顔を覚えられない等がありますか?

記憶障害は言葉や文章だけではなく、視覚にも表れます。
道を覚えられないことは、地誌的障害と言われています。
また病院内で一回、廊下を曲がると自分の位置に混乱をきたす空間認識能力の低下もよくある兆候です。
また顔を覚えるのが苦手のレベルでは済まない症状は相貌失認と言われています。

高次脳機能障害-記憶障害

このように一口に記憶障害と言っても種類、傾向が分化しています。

高次脳機能障害-記憶障害

言語、行動、視覚などあらゆる角度から観察する必要があります。
これは後の神経心理学検査の計画をする際、必須の情報となります。