交通事故で手足を切断!
これは、よく耳にしますが、結果、被害者が出血多量で亡くなった? これは、ほとんど聞きません。
026-1
事故外傷が発生すると、交感神経の緊張=反射が高まり、神経伝達物質、アドレナリンを放出、アドレナリンには血管を収縮させる作用があり、これにより出血を止めているのです。
さらに、四肢の血管は収縮し、腫脹を防止します。
医学の常識では、外傷が治癒に向かうと、交感神経の反射は消失、正常な働きに戻ります。

では、交感神経反射が消失せずに続いたときはどうなるのでしょうか?
アドレナリンが放出され続けることにより、血流障害を起こします。

血液は全身の細胞に酸素と栄養を送り、老廃物や不要なものを回収しているのですが、血流障害により、細胞に必要な栄養は届かず、老廃物はたまる一方となります。
交感神経が緊張しているときは、副交感神経の働きは抑えられます。
副交感神経は、臓器や器官の排泄や分泌を担当しています。

便や尿の老廃物の排泄、ブドウ糖を利用するときに必要なインスリン、つまりホルモンや消化酵素やタンパク質の供給が著しく低下し、身体は循環不全を起こすのです。
白血球は、顆粒球+リンパ球+単球で構成されているのですが、交感神経優位のときは顆粒球が活躍しています。 顆粒球は血液の流れに乗り全身をパトロールしています。 

体内に侵入した細菌や細胞の死骸を食べて分解し身体を守っているのです。
食事や休憩をしているときは、副交感神経優位となりリンパ球が活躍しています。
交感神経の緊張状態が続くと、顆粒球が増え続けます。
顆粒球は活性酸素を放出し、その強力な酸化力で細胞を殺傷することになります。

交感神経の暴走により、
①血流障害
②排泄・分泌機能の低下
③活性酸素による組織破壊
これらの状況が長期間続いたことにより、灼熱痛を生じるものが、RSDと呼ばれていました。

ところが、交感神経ブロック療法を行っても、全く無効の症例が報告されており、交感神経の関与しない痛みが存在することが明らかになってきました。
そこで、 1994 年に世界疼痛学会、IASPでこれらの類似した症状を呈する疾患をCRPS、複合性局所疼痛症候群と呼ぶことになりました。

1)CRPS、2つの分類

①CRPSタイプⅠ=RSD、反射性交感神経性ジストロフィーと診断されるもの、
捻挫、打撲の軽微な外傷で、神経損傷が不明確であるにもかかわらず、難治性疼痛を訴えるもの、

②CRPSタイプⅡ=カウザルギーと診断されるもの、
創傷、脱臼や骨折の神経損傷が明らかな外傷で、難治性疼痛を訴えるもの、

2)診断基準

A 国際疼痛学会CRPS診断基準
TypeⅠ
①CRPSの誘因となる侵害的な出来事、あるいは固定を必要とするような原因があったこと、
②持続する疼痛があるか、アロデニア、あるいはピンプリックの状態があり、その疼痛が始まりとなった出来事に不釣り合いであること、
③経過中、疼痛部位に、浮腫、皮膚血流の変化、あるいは発汗異常のいずれかがあること
④疼痛や機能不全の程度を説明可能な他の病態がある場合、この診断は当てはまらない。
注意 診断基準②~④を必ず満たすこと
TypeⅡ
①神経損傷があって、その後に持続する疼痛、アロデニアあるいはピンプリックのいずれかの状態があり、その疼痛が必ずしも損傷された神経の支配領域に限られないこと
②経過中、疼痛部位に、浮腫、皮膚血流の変化、発汗異常のいずれかがあること
③疼痛や機能不全の程度を説明可能な他の病気がある場合、この診断は当てはまらない。
注意 診断基準①~③を必ず満たすこと、

※アロデニア=通常では痛みを感じない刺激によって生じる痛み、
※ピンプリック=安静時に悪化する痛覚過敏、

B 厚生労働省CRPS判定基準
1)病期のいずれかの時期に、以下の自覚症状のうち3項目以上該当すること、
ただし、それぞれの項目内のいずれかの症状を満たせばよい。
①皮膚・爪・毛のうち、いずれかに萎縮性変化
②関節可動域制限
③持続性ないし不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み、知覚過敏
④発汗の亢進ないしは低下
⑤浮腫

2)診察時において、以下の他覚的所見の項目を3項目以上、該当すること
①皮膚・爪・毛のうち、いずれかに萎縮性変化
②関節可動域制限
③アロデニアないしはピンプリック
④発汗の亢進ないしは低下
⑤浮腫

3)検査による立証

検査法・補助的診断法
①疼痛の程度 VAS ( visual analog scale )、 pain scale
②知覚測定 Neurometer (末梢神経検査装置)
③腫脹・浮腫の程度 周囲径の測定、圧痕の有無、指尖容積脈波(プレチスモグラフィー)
④発汗の程度 櫻井式測定紙
⑤皮膚の血流状態 サーモグラフィー、レーザードップラー検査
⑥骨萎縮の程度 単純 XP 、三相性骨シンチグラフィー検査で骨破壊や骨形成のある部位を特定する
特にテグネシウムを静注して 3 時間後に撮影する delayed image は RSD の立証に有意
⑦神経障害・筋肉の活動状態 手指のグリップ時の動作筋電図、肩関節外転時の筋電図等、バラエティに富んだ筋電図検査

4)優れた治療先

①名称 日本大学病院
所在地 〒101-8309 東京都千代田区神田駿河台1-6
TEL .03-3293-1711
医師 麻酔科、ペインクリニック 小川 節郎 先生
外来診療 月曜日の午前、午後14:00まで、木曜日の午前・午後

小川 節郎 先生は、病院長を定年退職後も、外来で診療されています。
完全予約診療となっており、現治療先の紹介状が必要です。

名称 大阪大学医学部附属病院 麻酔科
②所在地 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15
TEL  06-6879-5111
医師 柴田 政彦
疼痛医療センター 金曜日 完全予約制で、受診には紹介状が必要

③名称 市立豊中病院 麻酔科
所在地 〒560-8565 大阪府豊中市柴原町4丁目14-1
TEL  06-6843-0101
医師 真下 節 病院長 (元大阪大学医学部附属病院 麻酔科教授)
疼痛外来、真下病院長の診察は、火曜日の午前中のみ

以下は、2005年、厚生労働省CRPS研究班の治療先です。

札幌医科大学 麻酔科、仙台市立病院 麻酔科、東京医科大学霞ヶ浦病院 麻酔科、筑波大学 整形外科、順天堂大学 麻酔科、JR東京総合病院 麻酔科、市立川崎病院 整形外科、北里大学東病院
整形外科、山梨大学医学部附属病院 整形外科、名古屋掖済会病院 整形外科、京都府立病院 麻酔科、稲田病院 整形外科、サトウ病院 整形外科、尼崎中央病院 整形外科、広島大学 麻酔科、
福岡大学 麻酔科、久留米大学 麻酔科、佐賀大学 麻酔科、宮崎大学 麻酔科

5)CRPSの後遺障害等級

後遺障害等級別表Ⅱ CRPSの後遺障害等級
等級 内容
7 4軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの
9 10通常の労務に服することはできるが、疼痛によりときには労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
12 13通常の労務に服することはできるが、ときには労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの

CRPSタイプⅠ=RSD、反射性交感神経性ジストロフィーについては、
①関節拘縮、
②骨萎縮、
③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
これらの慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められるときに限って、カウザルギーと同じ基準が適用され、等級が認定されています。

CRPSについては、神経系統の機能または精神の障害の系列における評価を基本とするが、CRPS以外にも関節機能障害の原因所見がある場合等、関節機能障害としての評価が妥当であると捉えられるときは、関節機能障害として評価することも可能であるとされています。

なお、CRPSに伴う疼痛と関節機能障害は通常派生する関係にあることから、いずれか上位の等級で認定されています。

CRPSタイプⅠ=RSDで上記の要件を満たしていないとき、経過上、RSD特有の所見が確認でき、かつ、RSDに対するブロック療法等の治療を行った結果、症状固定時においても1つ以上のRSD特有の所見を残しているものは、別表Ⅱの12級13号が認定されます。

上記には至らないものの疼痛の残存が医学的に説明できるものは、別表Ⅱの14級9号が認定されています。

※RSD特有の所見には、上記の要件に加えて腫脹、発汗障害等の所見が含まれています。

なお、後遺障害等級認定時において、外傷後生じた疼痛が自然的経過によって消退すると認められるものは、後遺障害等級の認定対象とはなりません。

6)CRPS関する裁判例

2004年7月28日、名古屋地裁判決
追突による頚部挫傷後、 RSD となった 26歳女性に対して、保険屋さんは被害者の行動や発言をとらえて心因性関与の素因減額を主張しました。

これに対して名古屋地裁は、これらの行動や発言は、事故時から 1 年半を経過した症状固定時のものであり、当時、被害者には左上肢の RSD の症状が継続しており、加えて新たに左下肢に疼痛の症状が現れ、増悪している状態であったこと、交通事故の被害者の治療が長期化し、補償交渉が進展しないときには、精神的にも不安定な状態に至ることは衆知の事実であること、これに RSD の有効な治療法が確立されていないことを併せれば、原告のRSDの発症が精神的素因に起因すると認めることはできないと判示しました。

上記の判例から学習できることは、医師の診断により、RSDが立証されていることがポイントです。
25件の裁判例では、RSDが立証されているものが13件に過ぎません。
12件があやふやな立証で、結果、8件がRSDを否定されています。
したがって、CRPS、特に、RSDは立証の困難な傷病名ですから、高度な専門医を発見し、その専門医に治療と立証をお願いしなければなりません。

裁判では、保険屋さんは心因性関与の大合唱で、素因減額を主張します。
CRPS、RSD では、例外なく治療が長期化します。
主治医に疼痛を訴えても、RSDの確定診断ができないレベルであれば、「その内、治る?」 とされ、結局は面倒になって心療内科や精神科に振られます。
心療内科や精神科の医師でRSDを理解しているのは極端に少数です。
一般的には神経症、不眠症、うつ状態と診断がなされます。
これらを根拠に、被害者の訴えには心因的素因があるとして、大幅な減額が主張されるのです。

保険屋さんによっては、RSDの発症は身体的・心因的素因が影響するものであり、RSDとの傷病名であれば、その傷病名が素因減額の対象となる? 実に乱暴な主張がなされています。
被害者は漫然治療に終始するのでなく、やはり早期に専門医を発見、治療を続ける必要があります。

CRPSにおける後遺障害のキモ?

1)後遺障害を考えるな!

1994 年に世界疼痛学会でCRPSが発表されるまで、難治性疼痛は、全てRSDと診断されていたのですが、交通事故110番では、その時代から現在まで、多くの症例を経験してきました。

CRPSと分類された現在でも、
※効果的な治療方法が確立されておらず、先の見通しが立たないこと、
※繰り返す灼熱痛で、就労に復帰できる状況にないこと、
※それに見合う後遺障害等級が用意されていないこと、

CRPSの重症例では、大変に、お気の毒かつ、深刻です。
サポートをしていても、自分がもしCRPSになったら、どうしようか? 考え込んでしまいます。
CRPSに限っては、後遺障害ではなく、重症化しないこと、できれば治癒することを考えるべきです。

2)専門医に走れ!

主たる傷病名が頚部捻挫であっても、CRPSタイプⅠ、RSDは、忍び寄ってくるのです。
事故後、灼熱痛、アロデニア、ピンプリックなどで苦しんでいる被害者は、ためらうことなく、先に紹介している専門の治療先、専門医の診察を受けるべきです。
専門医が、早期に適切な治療を開始すれば、実は、多くの被害者が一定の改善を手にしています。

交通事故の後遺障害は、大きく2つの要因で、拡大再生産が続けられています。
※高次脳機能障害に代表される、通常の外傷では予想できない不可逆的な損傷、
※診断力に乏しい医師による漫然治療の繰り返し、

CRPSは、診断力に乏しい医師のもとで漫然治療を続けた結果、重症化するものが多いのです。
この点、要注意です。

3)症状固定は、受傷から1年、

そんなルールはありませんが、私は、専門医の治療を1年間続けて、症状固定を判断しています。
専門医による治療の開始が早ければ、かなりの改善が得られているからです。
1年間の治療を続け、一定の改善を得て、12級レベルで症状固定を選択しています。

保険屋さんが、1年間について、治療費と休業損害を払い続けることは考えられません。
受傷から早期に弁護士に委任し、その後は、弁護士による具体的な症状、治療の見通しについて説明を継続し、できる限り、治療費や休業損害の支払が受けられるようにしています。

4)後遺障害は、

①疼痛の程度は、治療経過のVASスケールで、
②知覚の測定は、Neurometer (末梢神経検査装置)で、
③腫脹・浮腫の程度は、周囲径の測定、指尖容積脈波検査で、
④発汗の程度は、櫻井式測定紙で、
⑤皮膚の血流状態は、サーモグラフィー、レーザードップラー検査で、
⑥骨萎縮の程度は、XP、三相性骨シンチグラフィー検査、delayed imageで
⑦関節拘縮は、MRI、CT、可動域の測定で、
⑧神経障害・筋肉の活動状態は、筋電図検査で、

①~⑧の検査所見を明らかにし、国際疼痛学会、厚生労働省の判定基準に沿って、丁寧に立証しています。

CRPSに伴う疼痛と関節の機能障害は、通常派生する関係にあるところから、関節機能障害が認定され、等級が併合されることはないとされてきました。
しかし、労災保険はこの考えを改め、関節機能障害と比較して、上位の等級を認定しています。
福岡の爺さん会が、関節機能障害と比較して上位の等級を認定したのを確認しています。

1日目は、ムチウチ被害者の3通りの対応、非該当、14級、12級を学習しました。

さて、ムチウチ最難関である12級13号を獲得するために必要なことはなんでしょうか?
まず12級13号の絶対条件は、画像上の明らかな所見です。
医師や自賠責調査事務所がどのようにそれを確認しているのかを学びます。
この画像読影は弁護士先生が苦手とする分野です。
画像所見の確認方法、画像ソフトの使用方法を徹底的にマスターします。

「12級は難しいからねぇ・・?」 曖昧な対応は今日から必要なくなりました。

MRIの画像所見を確保する

MRIの画像所見?

矢状断、水平断を並列で表示しています。

まず画像分析ソフトを使って12級13号が見込まれる被害者の画像を表示します。
そして神経が圧迫されている所見を弁護士先生自ら探していただき、的確に指摘していただきます。
この一連の作業、画像ソフトの操作ができるまで、しぶとく特訓です。

12級13号の要件は、これらの画像所見に加え、その病変部から生じる、しびれ・痛み等の自覚症状の訴え、さらに病変部と矛盾しない神経学的所見、スパーリングテスト、腱反射、筋萎縮等を後遺障害診断書に落とし込むことです。

最後に弁護士先生自ら理想的な12級の後遺障害診断書を書いていただきました。
ここまでやればムチウチの全容を掴んだと言っても過言ではありません。

実務講座

文系最高峰の試験に合格した弁護士先生も今日は徹底的に理系を攻略しています。

弁護士の先生を対象に、交通事故外傷と後遺障害の実務講座を開催する?
不安でドキドキしながら始めた講座でしたが、3年目、4回を数えることになりました。

交通事故実務講座

今回のテーマは、外傷性頚腰部症候群、中心性頚髄損傷、肩関節の外傷、股関節・骨盤骨の外傷、
頸骨プラトー骨折、つまり膝関節の外傷、コットン骨折、足関節の外傷でしたが、主眼点は、ONISのソフトを使用してMRI画像を解読するところにありました。

特に、ムチウチでは、非該当とされるもの、14級9号になるもの、12級13号が認められる画像所見とは、この分別を徹底的に学習したのです。

ONISのソフトは、スクリーンに表示すると同時に、それぞれの弁護士がパソコン上で起動しています。
このソフトに非該当、14級、12級の画像を取り込んで、実際にコントラストや角度を切り替えて学習を続けたのです。

交通事故実務講座

外傷性頚腰部症候群、中心性頚髄損傷を例にとると、認定等級は、5、7、9、12、14級、非該当の6段階が予想されます。
そして、これらの等級は、MRIの画像所見と神経学的所見のレベルで左右されているのです。
もちろん、それらを見据えた上での症状固定時期の選択も重要な要素となります。

つまり、後遺障害に踏み込むには、MRI画像を分析する能力が必要とされているのです。
チーム110の5名の仲間は、Onis 2.5 Professionalのソフトで、14級、12級を分別することができる能力を身につけています。であれば、このノウハウは、交通事故に真剣に取り組む弁護士先生と共有すべきであるとの結論に至ったのです。

今回、実務講座に参加された弁護士先生は、ONISのソフトを実際に起動させ、15件のMRI画像や3DCTの解読作業を続けました。
あとは、経験則の積み上げで、理解がより深まります。
もう、ここまで進化しているのです。

3/1~2の土日、「第4回 法律家のための交通事故 実務講座」 を東京大手町で開催しました。
今回のテーマは、「実戦力を身につける!」 これが今回のテーマです。
研修内容の一部を報告しておきます。

(1)外傷性頚部症候群
ロールプレイ、被害者の後遺障害は非該当、14級9号それとも12級13号?
これまでのスクール型、座学研修と違い、弁護士先生には、ロールプレイに参加いただき、30分の模擬交通事故相談会を経験していただきました。

交通事故 実務講座

交通事故外傷の最大勢力は、なんと言ってもムチウチです。
被害者ファイルを参考にしつつ、質問を繰り返し、問題点を明らかにしていきます。
被害者役のチーム110が提出したMRIのCDもチェックしつつ、より深く探っていくのです。
傍聴の弁護士先生は、やりとりを聴きながら、被害者相談カルテを打ち込んでいきます。

このロールプレイの目的は、
①非該当か?
②14級9号は確実か?
③12級13号の可能性は?
上記の3つを確実に予測することです。

これより先に、参加の弁護士先生の左腕、上腕三頭筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋には、油性の赤マジックで、深部腱反射のポイントをマークしました。
それぞれ隣り合う先生の3点を打腱器で叩き、深部腱反射の測定法をマスターしています。

これまで多くの法律事務所は、「等級が取れてから、また来て?」 で、依頼者を追い返してきました。
今後、この手の法律事務所に被害者が戻ってくることはありません。
交通事故の専門家を名乗る以上、等級の確実な予測と、そこに至るまでの初期対応を万全としなければならないのです。

①非該当なのか、14級9号なのか?

□新車を購入して1年未満で修理費が150万円、こんな車に乗りたくない、新車にならないか?
□全損で現価が30万円、でも、この金額では同程度の中古車すら購入できない?
ありきたりの物損から始まり、
□過失割合に納得がいかない?
□治療が短期間で打ち切られるとの噂を聞くが、いつまで治療を続けられるのか?
□休業損害は、毎月、給料日に振り込んでほしい?
□この症状は、治療で治るのか?
□治らないとき、後遺障害が認められるのか?
□認められるとして、何級になるのか?
□等級が認定されたら、賠償額はいくらになるのか?
□賠償金は、いつ頃入金されるのか?
□本件の交渉を弁護士さんにお願いすれば、どれ位の費用になるのか?
これらが被害者の関心事です。

これに対して、相談を受ける弁護士の先生は、
□人身事故の届出を完了しているか?
□受傷から3カ月程度で改善が得られる症状なのか、神経症状が認められるのか?
□後遺障害が予想される症状なのか、であるなら症状固定の時期は?
□耳鳴りで、耳鼻科を受診しているか?
□現在の治療の内容に問題はないか?
□XP、MRIのチェック、画像所見が得られているか?
□治療先に問題はないか?
□整骨院、鍼灸院の施術に偏重していないか?
□休業損害の発生と、休業の見通し?
□過去にムチウチで等級認定を受けていないか?
先の質問に回答をしながら、これらの10のチェックポイントをクリアーしなければならないのです。
それも、30分以内で仕込まなければなりません。

聴き取りの方法もシッカリとあります。
Q 手指が痺れますか? →A いえ、痺れはありません。
こんな簡単なやりとりではなく、左右いずれかの頚部~肩、上肢そして手指に重さ感、だるさ感、軽いしびれ感はありませんか?と、丁寧に確認しなければなりません。

神経根症状

これは被害者自身でスパーリングテストを行い、神経根症状を誘発する簡易テストですが、「頚部をゆっくりと左右に屈曲してください。このとき、いずれかの手指に軽い痺れを感じませんか?」
このように確認するのがベストなのです。

痺れ等の神経症状が認められるときは、後遺障害14級9号の獲得が予想されます。
□整形外科・開業医における真面目なリハビリ治療を続けること、
□MRI撮影を終えていないときは、できるだけ早期に撮影を受けること、
□整骨院・鍼灸院では施術を受けないこと、
□受傷から6カ月を経過した時点で症状固定、後遺障害は被害者請求で申請すること、
□弁護士委任とすれば、保険屋さんから被害者に直接の連絡はなされないこと、
□静かな環境で治療に専念することができること、

これらを伝え、アドバイスとします。

MRI

治療先の主治医が後遺障害診断書に、「MRIにて、頚椎、C5/6右神経根の圧排を認める!」 このような画像所見の記載をしているのに、爺さん会からの等級認定通知書には、「提出の画像上、本件事故による骨折・脱臼等の器質的損傷は認められず、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えることは困難・・・?」 定型的な書面が交付され、非該当で後遺障害がバッサリ斬り捨てられることが頻繁にあります。

一体、どっちの言っていることが正しいのか?
爺さん会が顧問医に判断を委ねての結果なのか?
それとも、爺さん会の恣意的な認定なのか?
爺さん会が信用できる存在と思われないことも多々あって、法律家は大いに悩むところです。

メディカルリサーチ株式会社
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-22-13 虎ノ門秋山ビル2階
TEL. 03-6205-4033
画像診断・医学鑑定書・医学意見書などの医療調査サポートサービスで生命保険・損害保険・弁護士・法曹関係・調査会社をサポートするメディカルリサーチ

画像診断、医学鑑定書の作成では、上記のメディカルリサーチさんが先駆けですが、画像鑑定が8万円、意見書が25万円、鑑定書に至っては35万円、とてつもなく高額です。
そして、有力顧客が保険屋さんであることも、少し気になります。

これらに対応する必要から、エキスパート株式会社は、放射線科の専門医にお願いし、独自の画像鑑定システムを完成、法律家、弁護士に限定してクローズドスタンスで運用を始めています。
費用は、2万5000円からのスタートですが、訴訟に対抗できる鑑定書となると10万円以上となります。

しかし、どっちに転ぶか分からない画像の第一次分析に、高額な画像鑑定はためらわれます。

そこで、エキスパート株式会社は、1件、消費税を含み8400円で画像分析を行うことを決断しました。
放射線科専門医の指導の下、放射線技師の協力があり、この価格が実現したのです。
画像鑑定ではありませんが、Onis 2.5 Profesional のソフトを駆使しての画像分析ですから、異常所見を赤矢印で示して、具体的に指摘、シッカリとコメントします。

Onis 2.5 Professional

ONIS

ONIS 2.5 Professional is a powerful DICOM 2D/3D viewer, compatible with all modalities and all manufacturers. It can load any of the plugins, has support for multi-monitor configurations, can display images “on-demand” and more. This package is aimed at professional radiologists or other medical imaging professionals.

発注から原則的には、1週間で画像分析レポートを送達します。
画像分析の結果、上位等級の獲得が予想されるときは、放射線科専門医に画像鑑定を依頼し、画像鑑定書を新たな医学的所見として異議申立を実行することになります。
証拠に裏付けされた異議申立で、成功の確率を押し上げます。

①交通事故証明書
②傷病名が記載された治療先の診断書
③異議申立では、後遺障害診断書と等級認定通知書のコピー
④MRIおよびCTの画像が収録されたCDもしくはDVD
⑤当該被害者の同意書

これらの書類と、8400円の現金書留を添えて申し込んでください。
近日中に、エキスパートのHPにアップします。

8回にわたって続きましたシリーズも今日で一応の完結です。
高次脳機能障害は患者ごとに微妙に症状・程度が違うため、完全な分類は困難ですす。
しかしこのシリーズにて典型的な症状をチェックをすることで、等級申請を視野に入れた障害の全容を逃さず把握することができると思います。

何か異常があっても回復の期待から家族は過小評価しがちです。
そして微妙な症状は医師でさえ見逃します。
したがって相談を受ける弁護士は言わば最後の砦です。
絶対に見逃してはなりません。

(8)最後は四肢の「脳性麻痺」について

☐車椅子、杖、装具の使用状況は?
☐片側の足や手をよくぶつける。片側の腕や足にキズ・痣が絶ええない?
☐火傷をする。お風呂に入る際、手や足の左右で感じる温度が違う?
☐自力で排便・排尿ができない?
□尿漏れや逆におしっこがでない?

車椅子や装具の使用状態から、左右の上肢、下肢の運動麻痺をチェックします。
さらに細かく、肩・肘・手首・指、股関節・膝・足首・足指のどの関節が動かないか、麻痺の程度、「完全に動かない~やや動く」 「硬直して動かない、または力が入らない」 も把握しなければなりません。

また麻痺は触覚の低下、逆に過敏もあります。
右腕の触覚が低下したため、よくぶつけ、痣が絶えない被害者がいました。
温冷感の低下も困った症状です。
熱湯に触ってもすぐ手を引込めないため、常に火傷の危険性があるからです。

排泄やED障害については本人から言いづらいものです。
これは少し時間をおいてから確認すべきでしょう。

麻痺を整理します。

脳性麻痺

この表で類別後に、さらに程度と兆候が診断され、等級審査の判断材料となります。
完全麻痺  力がまったく入らない。
不完全麻痺 一部力が入る。
痙性麻痺  麻痺筋の緊張が亢進している。
弛緩麻痺  麻痺筋の緊張が低下している。

運動麻痺は障害審査の重要な要素です。
車イス(1~2級判断)や装具(一肢につき8、10、12級判断)の使用状況で即等級が判断できます。
しかし触覚や温冷感の麻痺は見逃されやすく、また判断される等級も12級相当で止まっています。
これらを他の記憶障害などに含めて判断するのか、併合するのかは、受傷部位や程度・状態から判断されているようです。

公開中の映画、「抱きしめたい」 

現在、公開中の映画、「抱きしめたい」 で北川景子さんが演じる障害者のつかささんは、交通事故で高次脳機能障害となり、左半身の完全麻痺で車イス使用を余儀なくされました。
また、記銘力の低下、短期記憶障害で新しいことを覚えることが苦手になってしまったようです。

映画は北海道が舞台で、実話が原作となっています。
このように障害が重くてもハンデを乗り越え、結婚・出産を果たし普通に生活している被害者さんもたくさん存在しています。
最後に、障害者のみならず健常者もこの障害を知ること、より理解することが必要と思います。

(7)味覚・嗅覚・めまい・ふらつき

 ☐味がついているのに大量に醤油をかける?
☐事故後、嫌いで食べられなかった魚介類が食べられるようになった?
☐足元にガソリンがこぼれているのに、ライターで着火してタバコを吸おうとする?
☐腐った果物でも、平気で食べ続ける? 

これらは、実際に担当した被害者に見られた症状です。
ガソリンの強烈な臭いを感じない、腐っている食物の臭いや味が理解できない?
大変危険な障害と言えます。
味覚と臭覚の異常は、多数例で併発しています。

味覚・嗅覚は、前頭葉に損傷を受けたときに失われる感覚です。
また、頭蓋底骨折から嗅覚、味覚、視覚、聴覚に障害を起こすこともあります。
機械で例えるなら、脳本体の損傷では、感覚を認識する回路の故障と言えます。
神経損傷では、神経伝達が絶たれたことを原因とします。
つまり、ケーブルの断線に該当します。

高次脳機能障害の被害者で、これらを多数経験しています。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感が正常か、すべてチェックする必要があります。
該当する障害について眼科、耳鼻咽喉科、神経科にて受診、検査を受けることになります。
回路の故障かケーブルの断線か、原因の特定は脳外科ですが、臭いがしない、味がわからないといった障害の有無、程度の検査と立証は、それぞれの専門科になります。

☐まっすぐ歩けず、蛇行している?

脳障害疾患

ジョーは、ボクサー特有の外傷性脳障害疾患、パンチ・ランカーで蛇行歩行となります。

☐めまいを訴える。なんでもないところで転倒する?
☐頭痛に悩まされている?

脳幹出血の被害者でめまい・ふらつき等、運動機能の障害となった例を経験しています。
また後頭部、小脳の損傷では平衡感覚の喪失、運動神経の低下が現れます。
頭痛は損傷の部位に関わらず、多くの高次脳機能障害の被害者にみられる自覚症状です。

ちなみに等級認定では、記憶障害や注意機能障害の評価にこれらの症状を含めて総合的に等級判断するときと、嗅覚・味覚障害、めまい・ふらつきなどを12級相当として高次脳機能障害等級に併合するときがあります。

これは前述のとおり、脳の損傷の一環か、別部位の受傷かで併合適用の判断となります。
実際問題として、併合か否かは、総合的に症状の程度から判断していると考えています。

(6)情動障害、人格変化

これも前日の注意・遂行能力の障害に同じく、元々の個性を考慮しなければなりません。
性格が怒りっぽい人やわがままな人もいるので、やはり家族から聞かなければわかりません。
些細な変化では主治医でも把握できないのです。

☐些細なことでキレる?
☐幼児に返ったように行動・発言が子供っぽくなった?
☐人前で着替えを始めてしまう?

「易怒性」と言って多くの被害者で経験しています。
理由なく不機嫌になる人もおりますが、多くは電車で人の声が大きいとか、テレビのニュースの内容が気に食わない程度のことで、いつまでも文句を言い続けています。
通常は理性で抑えられるようなことも我慢できないようです。

幼児退行は認知症患者に多い例ですが、事故後、30歳になるいい大人が部屋をぬいぐるみで一杯にしたり、家族に甘えたりわがままを言うようになります。

羞恥心が低下する、感情を抑えられずにすぐ泣く、気に入らないと物にあたる、これらは「脱抑制」に分類されます。
理性で抑えることができず、より本能的になってしまうようです。

情動障害、人格変化

☐毎週のようにゴルフをしていたのに、家にあるゴルフクラブに見向きもしなくなった
☐明るくよくしゃべる人だったのに、無口で暗くなった
☐いつも疲れていて家でゴロゴロ、昼間でも居眠りが多い

「性格変化」は文字通り性格が変わってしまうことです。
久々に友人が訪ねてきてもそっけなく、友人は「人が変わった?」ように感じます。
私の経験では性格が陽気になった例はなく、多くは陰気、人見知り、悲観的になる傾向でした。

極端に疲れやすい。
これは肉体的な疲れというよりは精神的な疲れです。
「易疲労性」に分類されます。
この障害により職場や学校への復帰が困難となります。

情動障害、人格変化

(5)注意障害、遂行機能

注意障害と遂行能力障害の兆候は重なる部分が多く、多くの場合、併発します。
障害ではなく、そもそも飽きっぽい人、要領が悪い人がおります。
元々の能力、性格かもしれません。
やはり事故前後の比較が必要で、家族の観察を聞かねば判断できません。

注意障害

☐仕事を始めてもすぐ、ボーっとしてしまう。 集中力がもたない?
☐お皿を洗っている途中で、テレビを観始めてしまう?
☐窓の掃除をすると、ずっと同じところを拭いている?

注意障害とは集中力が極端に低下します。
したがって脈絡のない行動にでる、会話もまとまりがなく、話が飛びがちです。
同時にいくつかの作業を進めることができなくなります。
また逆に1つのことに固執してしまうこともあります。
これでは、仕事や勉強も長続きしません。

遂行機能

☐旅行の計画、段取りが立てられない?
☐買い物の段取りが悪く、売り場を行ったり来たりして何倍も時間がかかる?
☐家族に促されないと病院に行かない、薬を飲まない?

事を計画すること、効率よく処理すること、最後までやり遂げることができません。
注意障害に同じく、同時に2つの作業を進めることができません。
児童で典型的な例を経験しています。
「コップを取ってきて!」 1つの作業を頼めば問題ないのですが、「コップに牛乳を注いで、もう1つはジュースを注いで持ってきて!」 と頼むと、何もできずに固まってしまいます。
このように作業が重なると脳の処理が追いつかなくなるのです。

また「自発性の低下」 と言って自ら行動する意欲が失われます。
お腹が空いているのに、家族が配膳しなければ食事をしないでずっと待ち続けます。

(4)視覚認知機能、失認、失行
Q 歩いていてよく左肩をぶつけませんか?

半側空間無視

左目が見えないのではなく、左目に映る映像を認識できない状態です。
これを半側空間無視と呼んでいます。
左半側空間無視では、圧倒的に左側に問題が生じます。
通常、人は眼に映った情報を脳で解析しています。
しかし、脳の解析システムが故障することにより、左眼に映るものが認識されない状況に陥るのです。したがって、被害者本人には、見えていないことすら自覚できません。
コブクロを例にすると、ギター奏者しか見えない状態となるのです。

こんな兆候がないか、家族から聞き取る必要があります。

□食卓におかずを並べ、食事を始めても、右半分のお皿しか箸をつけない?
□片側から話しかけられても反応せず、片側に人が立っていても、その存在に気がつかない?
□家の絵を描かせると、片側半分だけしか描かない?

半側空間無視

□リンゴをピックアップするように指示をしても、中央から左側のリンゴを見落とす?

Q 右手を出してと言われても、左手を出す、よく左右を間違えませんか?
左右の側頭葉のいずれかが損傷した被害者で数例、経験しています。
左右の区別が定かではなくなり、よく右と左を間違えます。
これは、左右失認と呼ばれています。
些細なことと思われますが、この障害により、様々な場面で判断能力が低下します。

治療先で頻繁に通院している病院で、トイレに出かけます。
トイレから出て、1回、廊下を曲がると、元の場所に戻って来ることができません。
右側頭葉の障害では、自分の位置に混乱をきたす空間認識能力の低下がよく起こります。

Q 主治医の顔、もしくは新しく会った人の顔を覚えられないなどありますか?

顔を覚えことが苦手のレベルでは済まない症状のことを相貌失認と呼ばれています。
相貌失認では、人の区別だけではなく、笑っているのか、怒っているのか等、表情を読み取る観察力も失われることがあります。

Q 箸やスプーン、歯ブラシが使えなくなる、いつも使っていた電気器具の使用法を忘れてしまった?

日常の動作がスムーズでない、今まで使っていた道具が使えなくなる障害を失行と呼びます。
□着衣の動作がぎこちない、
□スラックスを逆にはこうとする? さらに、そのことに気づかない?
□愛用していたカメラで写真を撮ることができない?

ご家族から色々エピソードを聞き出します。