人身傷害保険は償いの保険、補償保険、どっち?

 

償い

冒頭で説明しましたが、
賠償保険とは、対物保険、対人保険であり、ズバリ、壊した、怪我をさせた相手に支払う保険です。
誠に申し訳ありませんと平謝りで、損害賠償に応じる償いの保険なのです。

さて、保険屋さんは100万円の償いを提示しました。
被害者は、「冗談じゃない!」 として300万円を請求しました。
両者の乖離が大きいので、弁護士に委任、本件を訴訟で争うことになりました。
裁判では、250万円を支払えとの判決が出ました。

償いの金額とは、そもそも話し合いで決着をつけるものなのです。
保険屋さんの提示額に納得できなければ、裁判所に判断を求めることになります。
保険屋さんの提示額が、唯一、すべてではないのです。

さて、保険屋さんは、人身傷害保険は実額払いの補償保険であると苦し紛れに主張しています。
補償保険となれば、サンマの塩焼き定食と同じ、保険屋さんの提示額がすべてとなるのです。
誠に、保険屋さんにとって都合の良い解釈となります。

サンマの塩焼き定食

では、裁判所の判決を検証します。

H15-7-31、さいたま県東松山で交通事故が発生しました。
被害者は41歳パート主婦、自転車に乗って道路を横断中、普通貨物自動車の衝突を受けたもので、この被害者には、20%の過失が認められています。
この女性は、入院198日、通院357日で症状固定、脳挫傷で5級2号、嗅覚脱失で12級相当、併合4級の後遺障害が認定されました。
東京地裁が認定した総損害額は7203万円ですが、20%を過失相殺、判決額は5762万円です。

この被害者は、当時、日動火災の人身傷害保険から527万円の支払を受けていました。
日動火災は、この527万円の代位請求をするのですが、判決では、これが否定されたのです。

判決では、これが否定されたのです

理由は、被害者の過失相殺額は、7203万円×20%=1440万円、人身傷害保険の支払は527万円、
地裁基準で計算した過失相殺額を下回っており、代位請求権は取得できないと判示されたのです。

約款では、代位取得の範囲については、「支払った保険金額の限度内で、かつ、被害者の権利を害さない範囲内で代位取得する。」  と規定されています。

東京地裁は、被害者の権利を害さない範囲内=被保険者の利益を尊重して、被保険者が保険金の支払いを受けても填補されない損害が残る限り、被保険者が保険会社に優先して損害賠償請求権を行使できると解釈したのです。

自賠責保険からの支払いは、損害賠償金の一部である。
一方、人身傷害保険では、保険金の支払いであって、損害賠償金ではない。
このことが、法律的な根拠となっています。