各論 ムチウチを正しく理解する?

(1)いわゆるムチウチと年齢変性?
それは、頚椎神経根症のことです。

、頚椎神経根

追突等の受傷機転で、脊髄から分岐した末梢神経である頚椎神経根が損傷を受けたものです。
頚椎、C4/5/6の神経根が損傷、圧迫を受けたときは、支配領域である左右いずれかの上肢、肩~手指に痺れ感を発症することを特徴としています。

しかし、これに年齢変性が加わると、

①バレ・リュー症候群 ②胸郭出口症候群 ③椎骨脳底動脈血行不全症
④肩関節周囲炎 ⑤頚椎椎間板ヘルニア ⑥変形性頚椎症
⑦脊柱管狭窄症 ⑧後縦靱帯骨化症 ⑨脊椎分離、すべり症
⑩中心性頚髄損傷 ⑪頚髄空洞症 ⑫脊髄不全損傷

たちまち、12の傷病名が出てくるのです。
つまり、ムチウチを正しく理解すると、13の傷病名を理解したことになるのです。
私が申し上げる奥が深いとは、このことを指しています。

(2)では、脊椎の年齢変性とは?
人間は、悲しいことですが、歳を重ねるにつれ、それまでみずみずしかった皮膚や関節をはじめ、すべての組織が水分と柔軟性を失っていくのです。
毎日、保湿化粧品で素肌のお手入れに余念のない女性の方は実感としてご存知のはずです。

当然に、脊椎についても年齢による変性が18歳頃から始まるのですが、診断書には、年齢変性、加齢変化、経年性変化、退行変性と記載されています。
最初は、椎間板の変性から始まります。
水分、ムコ多糖類の減少により弾力性が失われてくるのです。
椎間板、椎体と椎体の間にある座布団が薄くなると、その結果として関節軟骨の磨耗や消失が起こり、軟骨下の骨硬化、骨棘の形成、骨嚢胞形成へと徐々に進行していくのです。
これを椎間関節の退行性変化と言います。
同時に、脊椎周辺の靭帯、筋肉、関節包、結合組織も硬化・肥厚を始めます。
これを軟部組織の線維性変化と表現します。
この段階に至ると、脊椎間は非常に不安定な状態となり、椎骨動脈の血行障害が出てくるのです。
さらに、動脈硬化により、脊髄や神経根の血流障害が正に追い討ちをかける状態となります。

C5の前方骨棘xp

C5の前方骨棘

これは、八王子整形のHPからお借りした画像で、かなり進んだ骨棘形成が認められます。
C5の前方骨棘はキリのように尖っています。
http://www.hachiouji-seikei.com/search/detail.php?order=eny1&recid=377

(3)年齢変性のどこが悪いの?
これは、誰にでも等しく認められる変性です。
保険屋さんの若僧でも、ましてやNliro調査事務所の爺さんとなれば、年齢変性のデパート状態です。

私は66歳ですから、やはり年齢変性はシッカリと認められています。
しかし、幸いなことに、脊椎の疾患はなく、整形外科の通院歴もありません。
このレベルは、年齢相応の変性あると説明されます。
そして、東京地裁民事27部は、年齢相応の変性は、素因減額の対象ではないと判示しています。

被害者は、すべてが事故のせいと思い込み、
保険屋さんは、それは年齢変性によるものと決めつけ、
これは、どちらも間違っているのですが、
裁判所は、年齢相応の変性は、問題としないとしているのです。

間に挟まれた弁護士は、医師に、年齢相応の変性なのか? これを確認しなければならないのです。
こんなとき、医大系の脊椎・脊髄外来の専門医を承知していれば、話が早いのです。
年齢相応の変性であれば、なんの問題もありません。

しかし、脊柱管狭窄症や後縦靱帯骨化症と確定診断されれば、交通事故以外の疾患となります。
であれば、既往症で素因減額の対象ですから、被害者には、そのことを説得しなければなりません。