Q 身分上・生活上の一体関係と共同不法行為?

交通事故について 自立している30歳の息子が運転する車に、50歳の母親が同乗していたのですが、相手車の信号無視により事故受傷しました。
息子と、母親は、それぞれが、相手に対して個別に、損害賠償請求ができますか?
それとも、被害者側として、まとめて請求することになりますか?

息子にも10%程度の過失があったとき、息子の損害賠償請求は過失相殺されることになりますが、同乗の母親には過失が認められません。
母と子は生活関係上、一体をなしているとはいえないので、被害者側の過失とはなりません。
母親は、過失相殺されないのでしょうか?

熊本県、長野県に多く生息する理屈好きの素人が議論を吹っかけています。
弁護士としては、優しく、分かりやすく、笑ってころさなけければなりません。
関西のおはぎでは、皆殺しと半殺しがあります。
中のもち米を完全についてお餅にしたのが皆殺し、もち米のつぶを、ところどころ残してついたものを半殺しというのですが、本件では、皆殺しにしておかないと、あとが大変ひつこいのです。

①本件事故は、相手車の信号無視ですから、0:100、被害当事者に過失は認められません。
息子さんと母親の損害賠償は、民法709条により、個別に請求することになります。
被害者側として、まとめて請求をするのではありません。
不法行為による損害賠償に、「まとめてナンボ?」 はありません。

②次に、息子にも10%の過失が認められるときは、同乗の母親は、相手と息子の共同不法行為で負傷したことになります。
母親は、息子と、相手の2つの自賠責保険に請求することができます。

共同不法行為

息子さんの損害については、相手側は10%の過失相殺を行います。

③もう1つ、「被害者と身分・生活関係上、一体をなす関係?」 についてですが、息子と母親であれば、いつの場合でも、身分・生活関係上、一体をなす関係ではないと決めつけることはできません。

自賠責保険では、夫婦はアカの他人と見なしています。

自賠責保険では、夫婦はアカの他人と見なしています。

夫婦では、身分・生活関係上、一体をなす関係と見なされ、ご主人の過失割合が、同乗中の奥様にも適用されているのですが、30歳の息子が独立して別居、親と生計を別にしているときは、一体をなす関係とは見なされません。
この場合は、母親は、民法719条1項前段により過失相殺の対象になりません。

一方、息子が独立をしておらず、親と同居して生計を共にしているときは、一体をなす関係と見なし、民法722条により、母親も10%の過失相殺が行われます。

④息子と母親が一体をなす関係と認められないとき、母親は、息子もしくは相手のいずれに対しても、損害の全額を請求することができます。
「えっ、過失が10%なのに、息子に全額を請求できるの?」
共同不法行為は、被害者保護の観点から、そのように規定されているのです。

ただし、母親の損害額については、いずれか一方から全額、あるいは双方から合計で支払われた段階で、請求権が消滅するので、両方から全額を貰えるということではありません。
また、負担した一方の加害者は、負担額の限度内で、過失割合に基づいて、もう一方の加害者に求償請求をすることができます。

⑤例えば、横断歩道を歩行中、2台の自動車の出合い頭衝突が発生し、スピンした1台の自動車が横断歩行者をはね飛ばしました。1台は任意保険に加入しているが、10%と過失は少ない、もう1台は無保険で圧倒的な過失、90%であったと仮定すると、弁護士は、過失は少ないが、任意保険に加入している相手に対して、損害賠償請求を行うのです。

共同不法行為では、被害者は、それぞれの加害者のいずれに対しても全額の請求ができるのです。
無資力であり、回収不能のリスクも、被害者がかぶることなく、一方の加害者に背負わせることができるのです。