第4回 実務講座 事前学習 1
外傷性頚・腰部症候群=traumatic cervical syndrome=TCS

外傷性頚・腰部症候群= TCS は、現在でも、交通事故後遺障害の最大勢力です。
ここでは、 TCS について、科学的、合理的なアプローチを試みます。

☆TCS の5分類?

(1)頚・腰部周辺の筋肉や靭帯の軟部組織の炎症に止まるもの、

傷病名は、頚部捻挫、頚椎挫傷、外傷性頚部症候群、腰部捻挫、腰椎挫傷等と記載されます。
頚腰部に、過伸展や過屈曲が発生したとしても、その程度が軽ければ、頚腰部を囲んでいる筋肉や靭帯の軟部組織の部分断裂や出血の傷害で止まるものが大半です。

これが、頚部捻挫全体の 70 %近くを構成しているのですが、外傷医学の常識としては、受傷後3カ月前後で出血は毛細血管を通じて吸収され、症状は改善、治癒します。

「どんな症状であっても、70回以上通院すれば、14級9号が認定されますよ?」
こんなオバカなお祭り騒ぎをしているHPもありますが、外傷性頚腰部症候群に特有の神経症状が認められないムチウチでは、500回通院しても非該当です。

相談会では、主たる症状について確認しています。
6カ月近くになるのに、頚部痛、運動制限、肩凝りを訴える被害者に対しては、「嘘つくな!」 私は1人、心の中でつぶやいています。

頚部捻挫では、上肢~手指にかけての重さ感、だるさ感、痺れが、腰部捻挫では、下肢~足指にかけての重さ感、だるさ感、痺れが代表的な神経症状です。
神経学的所見に乏しく、軟部組織の炎症にとどまるTCSは、後遺障害の対象にはなりません。

(2)脊髄から枝分かれをした末梢神経である、神経根に障害を残すもの?

傷病名は、頚部捻挫、外傷性頚部症候群、頚椎神経根症、頚椎椎間板ヘルニア、腰部捻挫、腰椎椎間板ヘルニア、腰部神経根症等とされ、これらは後遺障害の対象となりますが、根本的には、被害者の年齢変性を原因としています。

ひび割れ茶碗

保険屋さんは、年齢変性・退行変性のことをひび割れ茶碗と呼んでいます。

代表的な傷病名 頚椎神経根症=radiculopathy?

頚椎神経根症

追突事故等の衝撃で、頚部は日常生活では経験しない過伸展+過屈曲を経験します。
頚部周辺の軟部組織、筋肉や靭帯の一部が断裂、出血、軟部組織は筋緊張状態となり、事故直後の頚椎XPでは、生理的前弯が失われ、頚椎が直立した状態となります。

先の過伸展+過屈曲の影響により、頚椎の整合性が崩れ、椎間が狭小すると、椎間を走行している神経根は、鉗子で挟みつけられた状況となり、挫傷するのです。

脊髄から枝分かれをした頚髄神経=神経根は左右に8本あります。
この末梢神経、C5/6/7は上肢に走行し、上肢を支配しています。
このイメージが植物の根に似ているところから、神経根と呼んでいるのです。

挫傷した側の神経根の支配領域である上肢に痺れや疼痛を発症します。
神経学的所見では、スパーリング、ジャクソンで+、C5/6では、三角筋、上腕二頭筋が、C6/7/8では、上腕三頭筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋が、C8/Th1では、小指外転筋が、筋力低下、筋萎縮を示し、深部腱反射は低下もしくは消失します。

神経根の圧迫所見がMRIで確認され、これが外傷性所見と判断、画像所見に一致する神経学的異常所見が確認された時には、12級13号が認定されます。

最近、放射線科の専門医とジョイントし、後遺障害の獲得で効果を上げているのですが、受傷から2カ月以内の頚部MRIで、C5/6/7のいずれかの神経根に浮腫を複数例、確認しています。
つまり、神経根が挟み付けられ、腫れ上がっているのです。
多少の年齢変性があっても、神経根に浮腫が認められれば、これは明確な外傷性所見です。
ただし、これを発見するには、条件があります。
受傷から2カ月以内のMRIでないと、浮腫の確認はできないのです。
腫れは、時間の経過で元通りに戻るからです。
ですから、HPでは、なにがなんでも早期相談と大騒ぎしているのです。

MRIで確認されなくても、針筋電図検査で支配領域の上肢に神経原性の麻痺が確認できれば、12級13号が認定されます。 神経原性麻痺は他覚的所見と判断されているのです。

圧迫所見が画像で確認されても、外傷性所見ではなく、年齢変性と判断されたときには、14級9号となります。 画像所見、針筋電図検査で異常所見が得られていなくても、自覚症状と頚部神経学的所見が神経根症に一致していれば、14級9号が認定されています。

★理解のポイント

交通事故相談では、いわゆるムチウチ被害者が最大勢力です。

□人身事故の届出を完了しているか?
□受傷から3カ月程度で改善が得られる症状なのか?
□後遺障害が予想される症状なのか?
□耳鳴りで、耳鼻科を受診しているか?
□現在の治療の内容に問題はないか?
□XP、MRIのチェック、画像所見が得られているか?
□治療先に問題はないか?
□整骨院、鍼灸院の施術に偏重していないか?
□休業損害の発生と、休業の見通し?
□過去にムチウチで等級認定を受けていないか?

これらを30分程度の面談でチェック、把握する必要があります。
そして、参加の被害者には、症状固定に向けて適切な指示をすると共に、実利ある解決の提案をして、驚かせなければならないのです。

そのためには、ムチウチの5つの類型を正しく理解しておくことです。
本日は、到底、後遺障害が認定されないものと、一定の条件を満たせば、後遺障害が予想されるものを取り上げました。

「ムチウチで後遺障害は困難ですよ、いずれにしても、等級が認定されてから相談してください?」
こんな対応であれば、時間の無駄、被害者の誰1人も戻ってくることはありません。