(3)脊髄本体に障害を残すもの?

傷病名は、中心性脊髄損傷、脊髄不全損傷、頚椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症等になり、後遺障害の対象となる重い症状を示します。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎椎間板ヘルニアが、左右の神経根ではなく、正中、脊髄を圧迫していれば、症状は両上肢の疼痛や痺れとなって出現します。

なお、中心性脊髄損傷は、脊髄損傷であり、 TCS の範疇に含まれません。

重篤な傷病名 中心性頚髄損傷?
事故状況も追突、被害者の訴えも通常のむち打ち損傷と何ら変わらないのに、傷病名は、脊髄中心性損傷との記載がなされているものがあります。

元々の学説は1954年、当時の西ドイツのシュナイダー医学博士が、頚髄損傷であれば下肢の麻痺も認められて当然であるのに、下肢には麻痺がほとんど認められず、上肢の麻痺が主体の患者について死亡後解剖を行ったところ、脊髄の中心部の損傷が激しかったと学会に発表したのが始まりです。

神経線維

解剖学的には上肢に行く神経線維は中心寄りに、下肢に行く神経線維は外側寄りに存在しており、中心部に損傷が強ければ上肢の症状が重く、下肢の症状は軽くなる傾向です。

脊髄の辺縁部は周辺を取り囲む多くの血管によって栄養を受けていますが、中心部は中心動脈から枝分かれした毛細血管から栄養を受けています。
このことからも、脊髄の中心部は、損傷を受けやすく、回復しにくいという特徴を示します。
この症例は、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症が基礎にある、中年以降の被害者に比較的軽微な受傷機転で発症することが多いのを特徴としています。

上肢の症状が、下肢よりも強く出現します。
具体的な症状としては、運動麻痺、痛み、ビリビリするような両手や手指の痺れです。
タンスの角で腕をぶつけたとき、電気が走るような痺れを経験されたことがありますか?
こんな痺れが、常時、両上肢に発生していれば、頚髄中心性損傷が疑われます。

T1.T2強調画像

左がT1強調画像で、C4からC4/5椎間高位に中軟化型損傷が確認できます。
右はT2強調画像で、軟化巣は、高輝度変化として確認することができます。

T1強調画像とは、体内の脂肪分を強調して撮影する方法で、椎間板の突出や出血の状態を確認するのに有意な撮影方法です。
全体的に黒っぽく、コントラストがハッキリしているものが、T1強調画像です。

T2強調画像は、体内の水分を強調して撮影する方法で、髄液や膀胱内の状態を確認するのに有意な撮影法と説明されています。
全体的に白っぽくぼやけているような印象がT2強調画像となります。

いずれの場合も、コントラストは機械的な調整が可能です。
T1、T2強調のいずれで撮影するか?
コントラストの設定? これらは、主治医から検査技師に指示がなされています。
そして、脊髄は円柱型ですから、角度の取り方も所見を得るのに重大な役割を果たしています。

Nliro調査事務所は、MRIのT2強調画像で高輝度が認められることを、認定の要件としています。
ただし、この画像所見が確認できるのは、受傷後の急性期に限定されます。
慢性期にはT1強調画像で軟化型損傷を発見、立証する必要があります。

牽引などを用いて、頚椎を牽引し安静を保つ保存療法が中心となりますが、脊髄損傷であれば、非可逆性ですから、重傷例では、改善は認められません。
上肢の麻痺症状が顕著なときは、脊髄損傷として5、7、9級の対象となります。

先のMRI検査で立証、自賠書式=脊髄症状判定用に、主治医より臨床症状の記載を受け、後遺障害診断書と共に提出、等級の認定申請を行わなければなりません。
膀胱・直腸障害が認められるときは、泌尿器科で膀胱内圧検査、肛門内圧検査も受けなければなりません。 症状固定は、不可逆性脊髄損傷ですから、受傷後6カ月で問題ありません。

中心性頚髄損傷、傷病名で騙されるな?
中心性頚髄損傷と診断されていても、経験則では、70%はニセモノです。
MRIで高輝度所見の得られない頚椎症、中には単純ムチウチも混在しています。

中心性頚髄損傷となれば、事故直後のステロイド療法が有効とされています。
被害者が両上肢の痺れを訴えただけで、入院を指示し、ステロイド療法が実施されるのです。
この治療が終了してMRIの撮影を行っても、高輝度所見が得られないとき、本来であれば、「中心性頚髄損傷ではなく頚椎症でした。」 傷病名を訂正すべきであるのに、これを行うことなく、退院させる医師が多いのです。

私は、過去の経験則から、MRIの高輝度所見を確認するまで、頚椎症と考えることにしています。

★理解のポイント
中心性頚髄損傷は、傷病名の通り、脊髄損傷ですからムチウチのカテゴリーではありません。
しかし、ムチウチが混在していますから、軽々に傷病名を信用してはなりません。

受傷から早期にMRI撮影を指示し、MRIで高輝度所見が得られているか?
主治医の画像所見を鵜呑みにするのではなく、弁護士自身がMRIをチェックした上で、放射線科の専門医に画像分析を依頼する慎重さが求められます。