(4)椎骨動脈や、それと並行して走行している交感神経に障害を残すもの?

バレ・リュー症候群、脳底椎骨動脈血行不全症、
バレ・リュー症候群は、頚部交感神経の暴走を原因としており、治療先は、ペインクリニックもしくは麻酔科であり、早期に治療を開始すれば、多くは、受傷から3、4カ月で改善が得られます。
バレ・リュー症候群で後遺障害の認定はありません。

脳底椎骨動脈血行不全症は、極めて少数例で、この 35 年間で 1 例を経験したのみです。
無視してください。

バレ・リュー症候群
事故受傷、受傷直後は、首が痛い程度で特別にはなんともなかったのですが、3~4日して倦怠感、疲労感、熱感、不眠、脱力感、眩暈、耳鳴り、難聴、眼精疲労、流涙、視力調節障害、痺れ、肩凝り、背痛、腰痛、頭痛、頭重感、動悸、息切れ、四肢冷感、食欲不振、胃重感、悪心、腹痛、下痢、便秘などが一気に襲ってきました。 深酒もしていないのに、朝起きたら、強烈な二日酔いの症状です。

被害者は、フラフラになって病院に出かけます。
整形外科や脳神経外科で受診し、血液・尿・XP・神経学的検査を受けますが、ハッキリした異常は発見できません。

頚部の自律神経機能

「どこも悪いところはありません、気のせいでしょう?」 惚けた医師所見です。
大多数の被害者は、腹の中で、「このヤブが!」 毒づきます。
この後、転院を繰り返すのを、ドクターショッピングと呼びます。
中には形を変え、接骨院、鍼灸、中国医学、カイロプラクティック、気功、果ては足裏マッサージの方向に走られる被害者の方もたくさんおられます。
これをなんと呼ぶか、まだ浮かんできません。

これらの不定の身体的愁訴が存在し、これらに見合う器質的病変が各種検査によって裏付けられないものを総称して、医療の世界では、自律神経失調症と呼んでいるのです。
事故受傷で頚部の自律神経機能に障害が出ているものをバレ・リュー症候群と名付けています。

バレ・リュー症候群は、大正15年にバレ博士が、「頚部の疾患、外傷でありながら頭部や顔面に頑固な自覚症状を訴える症例があり、これらの症例は頚部の交感神経機能と密接な関わりを持つ!」 と発表したことに始まります。

交感神経は、頚椎の前側面の左右両側を走っており、頚椎間から伸びている神経根とは交通枝を持ち、互いに連絡を取り合っています。
事故受傷により頚部の神経根に障害が起これば、交感神経が、その影響を受けたとしても別に不思議なことではありません。

頚部の外傷により、交感神経の周囲に出血や浮腫が発生して直接交感神経を圧迫していることも十分考えられるのです。

頚部の交感神経は、頭部・顔面・上肢に流れる動脈の壁に分布して冠状動脈の拡張・収縮の役割を担当しているのです。これが圧迫等により刺激を受けてバランスを壊すと血行障害を発生させ、人体が正常に機能しないことになるのです。

夜、食事・入浴を終えて、さあ、寝ようか、この段階になると、頚部副交感神経は椎骨動脈に働きかけ、血流を抑制します。 すると、体温は下がり、人間は眠りのモードに突入するのです。

バレ・リュー症候群では、交感神経が暴走気味で活躍していますから、体温は下がらず、ベッドに入っても、眠りのモードに切り替えることができません。
結果、不眠が続き、睡眠障害を原因とした自律神経失調症の症状が次々と出現するのです。

整形外科でホットパック等のリハビリ治療を続けても、交感神経の暴走を抑え込むことはできません。

治療は、頚部捻挫と同様、特効薬はありませんが、頚部交感神経の過緊張状態を緩和させる目的で、星状神経節ブロック、硬膜外ブロック、トリガーポイントの注射が行われるのが普通です。
これにより、交感神経の暴走を抑制、自然治癒力により、交感神経と副交感神経のバランスを整えることが治療の眼目です。

この領域の治療は、麻酔科、ペインクリニック、自律神経科が担当しています。
通常の治療は、整形外科や脳神経外科が担当しますが、自律神経の専門医ではありません。
先の特有の症状で苦しんでいるときには、ペインクリニック、麻酔科等を受診、専門医の治療を受けることになります。このケースでは、整形外科と併診で治療を続けるのです。

バレ・リュー症候群の殆どのケースで、頚椎の4・5・6に退行性の変性が認められるとの報告がなされています。

保険屋さんの発想は何でもかんでも、むち打ち損傷、療養期間が3カ月を超えると詐病の扱いで、社内では、賠償金目当ての賠償神経症と呼んだりしています。
保険屋さんの主張する他覚的所見とはXP・MRIで確認できる画像所見だけを指しています。
その他覚的所見がハッキリ認められると、今度は年齢変性を引っぱり出し、本件事故との因果関係に乏しい? なんて、主張を始めるのです。
もう、ああ言えば、こう言う、つまらない繰り返しで、埒が開きません。

ところが、まじめな医師が担当する臨床医学の現場では、むち打ち損傷は、周辺の疾患を含めて14分類の対応をしています。被害者に必要なのは、真面目な治療先を発見すること、症状を正確に把握することです。 これを知って、的確な治療を受けてさえいれば、症状は程なく改善に向かいます。

保険屋さんのチョー無礼な態度にもさして興奮することもなくなるのです。
「今のうちだけ、ほざいておきなさい、本当の賠償神経症になってむしり取ってあげるからね?」 と被害者の気持ちを代弁しています。

体性神経と自律神経?
神経は体性神経と自律神経に大別されます。

新地のクラブで隣に座った妙齢の美人ホステスさんの手を握るのは、スケベ心で体性神経のなせる技です。 したがって、体性神経は動物神経とも呼ぶのです。

手を触れられた妙齢の美人ホステスさんの腕にトリハダが立てば、これは彼女の自律神経のなせる技なのです。 「サブー?」 つまり自分の意識でコントロールが可能なものは体性神経、自分の意識とは関係なく働き、コントロールの不可能なものが自律神経なのです。

美人ホステスさんの腕にトリハダ

自律神経は植物神経とも呼ばれるのですが、自律神経だけが働いて、呼吸、循環、消化、内分泌の機能が残存している状態を植物人間と呼ぶのも、ここから来ています。

涙を流す、汗をかく、トリハダをたてる、腸を動かす等々が自律神経の働きによるものです。
この自律神経には交感神経と副交感神経があり、お互いに相反する作用を繰り返しているのです。
交感神経は敵と争う体制を形成し、副交感神経は休養と栄養補給体制を形成しているのです。
心拍は交感神経では速く、副交感神経では遅く、血圧も交感神経では上昇、副交感神経では降下、消化管運動は交感神経では蠕動抑制、副交感神経では蠕動促進の働きを示すのです。

この交感神経と副交感神経が自動的にかつ程よくバランスを保って働いてくれていますので、人体の正常な機能が維持されているのです。
また、自律神経は身体と精神の間を取り持つ作用があるとも言われているのです。

★理解のポイント
□後遺障害が予想される症状なのか?
□耳鳴りで、耳鼻科を受診しているか?

バレ・リュー症候群は、後遺障害の対象となる症状ではありません。
理由は、ペインクリニックにおける交感神経ブロックで改善が得られるからです。
しかし、バレ・リュー症状の1つである耳鳴りは、30dB以上の難聴を伴っていれば、12級相当です。
耳鼻科を受診し、オージオグラム検査を受けなければなりません。
30dBに達しないときは、バレ・リュー症候群ですから、後遺障害を諦めます。