脱線が続いていましたが、事前学習に戻ります。

第4回 実務講座 事前学習 2
(5)腱板断裂

肩関節は骨同士が軟骨で接する関節面が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨の頭の大部分を覆うようにカバーしています。
腕を持ち上げてバンザイすると、腱板は肩峰、肩甲骨の最外側や靱帯からなるアーチの下に潜り込む仕組みとなっています。
アーチと腱板の間には、肩峰下滑液包、SABという潤滑液的なクッションのような組織もあります。

肩関節

腱板は肩峰と上腕骨骨頭にはさまれている解剖学的要因が腱板断裂の背景にあります。

肩の動きは複雑で、身体の関節の中でも、最も可動域が広く、解剖学的にも、かなり複雑な構造です。
肩甲下筋腱+棘下筋腱+棘上筋腱+小円筋腱の付着部位をまとめて腱板と呼び、解剖学的には、回旋筋腱板と呼んでいます。

肩関節

腱板は年齢と共に変性するのですが、肩峰と上腕骨頭の間に存在し、常に圧迫を受けています。
肩の働きでは、棘上筋腱が大きな役割を果たしており、交通事故では手をついての転倒、衝撃で肩を捻った場合、この部位に断裂が生じます。

腱板の断裂では、激烈な痛みと腫れを生じます。
肩を他人に動かされたときに、特有な痛みが生じます。
腕を伸ばし、気をつけの姿勢で、ゆっくり横に腕を上げていくと肩より30°程度上げたところで痛みが消失します。完全断裂のときは、自分で腕を上げることはできず、他人の力でも、疼痛のため肩の高さ以上は上がりません。

肩関節画像

XP                               MRI

 診察では、肩が挙上できるかどうか、肩関節に拘縮があるかどうか、肩を挙上したときに肩峰下に軋轢音があるかどうかをチェック、棘下筋萎縮や軋轢音があれば腱板断裂を疑診します。
XPでは、肩峰と上腕骨頭の裂陵が狭くなり、MRIでは骨頭の上方に位置する腱板部に白く映る高信号域が認められます。

断裂がある場合は、肩関節造影を行うと、肩関節から断裂による造影剤の漏れが認められます。
エコーやMRIにおいても断裂部を確認することができます。

治療は、若年者に対しては手術による腱板修復もありますが、中年以上では、肩関節の拘縮が懸念されるところから安静下で2週間程度の外固定が実施されるのが一般的です。
完全断裂の場合は、断裂部位の縫合術を行うこともあります。

私の経験では、外転運動が60°以下に制限、他動値では正常値の180°ですが、自力でその位置を保持することはできず、医師が手を離すと腕は下降、断裂部に疼痛が発生していました。
この状況をdrop arm signと呼ぶのですが、この被害者は、上肢の3大関節中の1関節の用を廃したものとして8級6号の後遺障害等級が認められました。
drop arm sign、覚えておいてください。

★理解のポイント
このシリーズでは、鎖骨骨折、肩甲骨骨折、肩関節の脱臼、肩鎖関節の脱臼骨折、腱板損傷の5つを学習しました。

□鎖骨の骨折は症例も多く、20人以上の無料相談会では、必ず、複数例を経験します。
後遺障害では、体幹骨の変形と肩関節の運動制限の2つの方向をチェックしてください。

□肩関節外傷の相談を受けるときは、骨に限局するのではなく、肩甲帯全体に視野を広げてください。
肩甲帯とは、肩凝りを感じる、首筋から二の腕の範囲のことです。
でないと、腱板損傷等を見逃してしまうことになります。

□肩関節周囲炎とは、俗に40肩、50肩と呼ばれるもので、後遺障害の認定はありません。
稀に、外傷性肩関節周囲炎なんて傷病名がありますが、惑わされてはなりません。

3月の実務講座では、弁護士5名を1ユニットとする島を5つ以上作ります。
それぞれのユニットには、右鎖骨遠位端骨折、骨幹部骨折、腱板損傷、保存療法、固定術が選択されたもの等、同一部位ですが異なるテーマを与え、30分の交通事故相談会から始めます。

その後、ユニットで協議され、問題点と解決法を明らかにした相談カルテを作成し発表します。

次に、検査結果や画像所見を配布、相談会の聴き取りと所見を基礎に、理想的な後遺障害診断書のドラフトを作成、発表します。

これらの一連の作業に参加されることにより、鎖骨骨折、周辺症状の一切をマスターします。
教材は、すべて、実際に後遺障害等級を獲得した実例です。

明日の交通事故相談会から役に立つ、実務講座を目指します。