第4回 実務講座 事前学習 2

 □鎖骨骨折 □肩甲骨骨折 □肩関節脱臼 □肩鎖関節脱臼骨折 □腱板断裂
ここでは、上記の5つを学習します。

(1)鎖骨骨折

鎖骨骨折は、自転車・バイクVS自動車の出合い頭衝突で多発しており、交通事故による全骨折中、10~15%の割合で、すべての年齢の被害者に、最も頻度が高く発生しています。
鎖骨は、通常の状態でも、皮膚の上から触れることができ、形状も理解できます。
骨折は、比較的簡単に、単純XP撮影で確定診断が可能です。

鎖骨骨折

また鎖骨は、胸鎖乳突筋により上方に引っ張られており、骨折では、骨折部内側は、胸鎖乳突筋の影響で、上方にズレます。
医学では、ズレを転位と言います。

症状は、腫れて痛みが強くなります。
私は未経験ですが、ほとんどの被害者は、眠れない激烈な痛みであったと表現されています。

単純XP撮影で、鎖骨に骨折の所見が認められます。

ほとんどのケースで、局所麻酔下に徒手整復固定を行い、バストバンドで固定します。
医学では、手術をしない治療のことを保存療法と言います。
保存療法では、骨折部が転位して癒合することが多いのです。
裸体で転位による鎖骨の変形が確認できれば、12級5号が認定されます。

XPで鎖骨の変形が確認できるのに、裸体では目立たない?
「ダイエットすれば、後遺障害慰謝料は290万円、このままデブなら0円、さあ、どっち?」
こんな被害者に対しては、ダイエットを指示しています。

①神経叢麻痺を合併しているとき、
②第3骨片が認められるとき、

第3骨片

③転位が大きいとき、
④骨折部が皮膚をつき破り皮膚が壊死する可能性があるとき、
⑤骨折が肩鎖関節にまで及んでいるとき、

上記5つでは、ただちに手術の適用となります。
AOプレートやキルシュナー鋼線などで鎖骨の固定を実施されます。

近年、単純骨折であっても、経皮的にKワイヤーで髄内固定を実施する治療先が増えています。
この術式であれば、骨折部が転位することもなく、肩関節に運動制限を残すことも稀です。
ただし、鎖骨下には動・静脈が走行しており、どこの治療先でもできる手術ではありません。
経皮的とは局所麻酔下に皮膚を小さく切開して行う術式で、被害者の苦痛も、当然わずかです。
この術式では、殆どのケースで後遺障害を残しません。

鎖骨の両端は肩鎖関節と胸鎖関節となっており、鎖骨の骨折部が肩鎖関節に近いときは、肩関節の可動域に運動制限を残すことが予想されます。

傷病名は、鎖骨遠位端骨折と記載されています。
余談ですが、骨折では、遠位端、近位端と表現されることが多いのですが、私は心臓に近いのが近位、遠いのが遠位と理解しています。
正しい理解なのか? 自信はありませんが、これなら間違うこともありません。

症状固定時期は、受傷後6カ月を経過した時点です。
鎖骨骨折だけにとどまるものであれば、就労は受傷1カ月目から可能です。
ダラダラ休ませるものではありません。

後遺障害は、鎖骨の変形によるものが12級5号、肩関節に運動制限を残すと12級6号、10級10号の選択となりますが、10級10号は稀なケースです。

★理解のポイント
□被害者が持参した画像から、鎖骨がどの部分で骨折しているかをチェックしてください。
中央部の骨折は、骨幹部骨折と言いますが、肩関節に運動制限を残すことは、ほぼ、ありません。
鎖骨の変形で12級5号が認定されるか? 検証を続けることになります。

□鎖骨の骨幹部骨折であるのに、肩関節の運動制限を訴えるときは、肩甲骨骨折や腱板損傷を合併していることが予想されます。
早期に肩関節部のMRI撮影、肩甲骨のCT撮影を指示しなければなりません。

□初診に傷病名がなく、受傷から4、5カ月を経過して発見された肩甲骨骨折、腱板損傷となると、Nliro調査事務所は、本件事故との因果関係を疑います。
カルテに肩関節の痛みや運動制限の記載がなければ、後遺障害を諦めることになります。
やはり、2カ月前後で発見しなければなりません。

□鎖骨骨折で、経皮的にKワイヤーで髄内固定がなされているときは、鎖骨の変形や運動制限で後遺障害が認定されることはありません。
本件事故では、後遺障害を残さないと説明をしなければなりません。