(3)肩関節の脱臼

肩関節の脱臼

脱臼とは、大きな外力が関節に作用し、関節端の一方が外に突き出る、飛び出した状況です。
関節包や靭帯の断裂を来すことになり、一般的には単純骨折よりも脱臼の方がはるかに重傷です。

元横綱の千代の富士が、現役時代、これに苦しみました。
彼の場合は、習慣性肩関節脱臼でした。
反復性肩関節脱臼とも呼ばれています。

交通事故では、バイクや自転車を運転中の出合い頭衝突に多い症例です。
肩関節脱臼は、外傷性脱臼の中では高頻度で、原因は、手をまっすぐに伸ばした状態で地面に手をついたり、落下したりして、肩関節から上腕骨頭が飛び出した状況です。

肩部の疼痛、時間の経過と共に腫脹が認められます。
当然、腕は垂れ下がった状態であり、自分で肩を動かすことはできません。
また、脱臼に伴って骨折や神経損傷を合併している場合は、それに付随した症状を示します。

外見上は、本来、肩に収まっているべき上腕骨頭が外れていますので、膨らんでいるはずの肩の外側が凹んでいたり、平に見えたりします。
単純XP撮影で容易に確認ができます。
骨折を伴っていることがあるので、骨折の合併には注意が必要です。

保存的に徒手整復で治療を行います。
脱臼の治療は、はるか昔から存在しており、Hippocrates法=患者の脱臼した方の脇の付け根に整復者の足をいれ強引に引っ張り整復を行うもの、
立体パズルのようにはめ込む=Kocher法などがあります。

うまく整復されたら3週間ほど固定し安静を保ちます。
ここで安静にしておかないと、脱臼がくせになります。
さらに、固定後2週間は外転運動を80°以内に止める注意が必要です。
何故なら習慣性脱臼=反復性脱臼に移行する確立が20歳以下の被害者で90%以上、40歳以上の被害者で25%と大変高率を示しているからです。

習慣性肩関節脱臼とは、外傷などを契機として肩関節の脱臼が起こり、それが癖になって軽微な外傷でも肩が外れるようになった状態を言います。
ひどくなると日常生活や寝がえりでも外れてしまうこともあります。

肩関節内の関節上腕靭帯という靭帯が、関節窩という受け皿から剥がれる、伸びる等で、靭帯として正常に機能しなくなった状態で、中には関節窩自体が最初の脱臼で骨折を起こしていてそのままになっているケースもあります。
高齢者以外では、関節鏡視下手術で、改善が得られます。

改善が得られない習慣性脱臼では、12級6号の後遺障害等級が認められています。

★理解のポイント
□肩関節外傷の相談を受けるときは、骨に限局するのではなく、肩甲帯全体に視野を広げてください。
肩甲帯とは、肩凝りを感じる、首筋から二の腕の範囲のことです。

肩甲帯全体

□肩関節は、鎖骨・上腕骨・肩甲骨・関節窩から構成されているのですが、これらの骨は、筋肉や靱帯、腱で結合されています。肩を動かすときは、肩甲帯にある複数の筋肉や腱、骨、靱帯が絶妙なバランスを保ちながら運動をしているのです。

□骨折にだけ注目していては、腱が切れた、肩関節が変形した、筋肉の収縮等を見逃します。