第4回 実務講座 事前学習 3

(2)骨盤骨折

骨翼骨折(ドーヴァネイ骨折)・恥骨骨折・坐骨骨折

腸骨翼骨折(ドーヴァネイ骨折)・恥骨骨折・坐骨骨折など、単純骨折であれば、骨盤の安定性が保たれており、3週間程度の安静を保つだけで後遺障害もなく治癒します。
さて、骨盤は左右2つの寛骨が後ろ側で仙腸関節、仙骨を介して連結し、前側で恥骨結合を介して連結しており、左右の寛骨は腸骨・坐骨・恥骨と軟骨を介して連結し、寛骨臼を形成しています。

恥骨結合離解と仙腸関節の脱臼

この輪の中の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な組織となっているのですが、大きな直達外力が作用するとひとたまりもなく複合骨折をするのです。
その他に、骨盤には大腿骨の寛骨臼があり、骨折がこの寛骨臼にまで及んでいる場合は、観血的に治療を行います。

まず、恥骨結合離解と仙腸関節の脱臼について説明して行きます。
上図のような不安定損傷になりますと、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離解についてはAOプレートによる内固定の必要が生じます。
上図は右大腿骨頭の脱臼も伴っています。

ここでの後遺障害は、骨盤骨の高さと上下の歪み、変形、右股関節の機能障害、右下肢の短縮に注目しなければなりません。
骨盤骨の変形は、12級5号が認定されます。

骨盤骨の高さの上下歪みでは、下肢の短縮と同じ現象が生じます。
骨盤骨の高度変形に伴い下肢に5cm以上の短縮が生じたときは、高度変形は12級5号、5cmの下肢の短縮は8級5号、いずれか上位の等級が認定されるので、8級となります。

骨盤骨の高度な変形により、股関節に運動障害が生じたときは、等級は併合されます。
骨盤骨の高度変形に伴い下肢に5cm以上の短縮が生じたときは、高度変形は12級5号、5cmの下肢の短縮は8級5号、股関節の運動障害で12級7号が認定されたときは、まずは、変形と短縮で8級となり、これに12級7号を併合して、併合7級となります。

やや複雑ですが、等級認定の仕組みは、なんとしても理解しておかなければなりません。

余談ですが、今から13年も前、真ん中の逆三角の部分、仙骨の縦方向の骨折と、仙腸関節の脱臼の相談を受けました。被害者請求では、骨盤骨の変形として12級5号が認定されました。

「どの医学雑誌をひもといても、仙骨は脊椎骨の一部とされている。」
「であるなら、脊柱の変形として、11級7号が認定されて然るべきである。」
「ところが、12級5号は骨盤骨の変形として認定されたものである。」
「仙骨が骨盤骨の一部であると主張されるなら、その根拠を示して反論されたい。」
火の玉の異議申立で、11級7号が認定されました。
爺さん会を論破したのですから、当時は、大いに溜飲を下げました。

現在は、12級5号と改訂されています。
そして、その後の損保料率機構の内部文書では、以下の申し開きがなされています。

「解剖学上、仙骨および尾骨は脊柱の一部であるとともに、骨盤骨の一部をなしている。
ただし、後遺障害等級表上の脊柱の障害とは、頚部および体幹の支持機能ないし保持機能およびその運動機能に着目したものであるから、これらの機能を有していない仙骨および、尾骨については、脊柱には含まないものである。
なお、脊柱の運動障害については、腰仙骨部の動きを含めて等級を認定する。」

火の玉の異議申立

当時は、慌てまくって、こんな反論はできなかったのです。
この申し開きは、私に対してなされたものに違いない? ニンマリと自負しているところです。

★理解のポイント
□骨盤骨の高度変形に伴う下肢の短縮では、画像ソフトで立証することができます。
http://www.onis-viewer.com/
Onis Viewer-Dicom viewer and PACSと打ち込み、表示の中からOnis 2.5 Free Editionをダウンロードします。 この無料ソフト上で画像のCDを開けば、左右の寛骨の高度差が計測できるのです。
詳細は、来年3月の実務講座で実演します。

□骨盤骨の高度変形に伴い下肢に短縮が生じたときは、いずれか上位の等級が認定されます。

□骨盤骨の高度な変形により、股関節に運動障害が生じたときは、等級は併合されるのです。