第4回 実務講座 事前学習 3

 (2)骨盤骨折 最終

寛骨臼骨折

骨盤骨・股関節の最終に、寛骨臼骨折をとりあげます。

寛骨臼骨折は、大腿骨頭が股関節の関節包を突き破って後方に脱出、寛骨臼の後方辺縁を骨折する股関節後方脱臼骨折と大腿骨頭が股関節の寛骨臼を突き破って骨盤内に脱臼する中心性股関節脱臼の2つがあります。

これらの傷病名を確認したときは、骨盤骨の変形にとどまらず、股関節の運動制限、坐骨神経障害、坐骨神経麻痺、大腿骨頭壊死、大腿骨頭もしくは人工関節置換術、変形性股関節症を想定し、後遺障害の検証を行うことになります。

坐骨神経障害?
坐骨神経障害で被害者が訴える症状は、おしりや太ももの後面、ふくらはぎに電気が走るように痛い、しびれる、感覚が鈍い、脚に力が入りにくいが代表的です。
坐骨神経障害とは、末梢神経障害の一つで、腰部から膝の裏側を通り下腿から足指まで走っていて、下肢全般の筋肉を支配しています。

下肢全般

多くは、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などに伴って発症していますが、寛骨臼骨折では、直接、坐骨神経を長時間圧迫することにより発症すると考えられています。
さらに、坐骨神経は、下肢全般の感覚を支配しており、重症例では、下肢の痺れ・痛みによる筋力低下により、歩行障害に至ることもあります。

坐骨神経麻痺?
坐骨神経は大腿の裏側と下腿の一部、そして足の裏の感覚を支配しています。
坐骨神経麻痺では、ふくらはぎの裏側や足の裏の痺れや感覚の鈍麻、うずき、灼熱感、疼痛を発症し、膝や足の脱力感を訴え、歩行困難となります。
足関節の自動運動不能となり、腓骨神経麻痺と同じく下垂足を示し、膝の屈曲が不能となります。

後遺障害は、膝関節の屈曲が不能な場合は、下肢の3大関節中の1関節の用廃で8級7号、足関節の下垂足でも同じく8級7号が、膝関節と足関節の両方に障害が認められるときは、1下肢の関節の用を廃したものとして、6級7号が認定されます。

坐骨神経障害と坐骨神経麻痺の立証
①針筋電図もしくは神経伝達速度検査で神経原性麻痺を立証、
②ラセーグテストで30°以下の挙上、膝屈曲が不能状態を立証、
③アキレス腱反射の減弱もしくは消失、
足関節の底屈不能、足を内側に曲げる内反運動が不能を立証、
④MRI検査で器質的損傷を立証、

若い女性で骨盤の多発骨折、尾骨の骨折では、婦人科を受診、精査を受けなければなりません。
骨盤の変形を原因として、正常分娩が不可能となり、帝王切開が余儀なくされることになると、11級10号が認定されるからです。
慰謝料について割り増し請求、出産が可能な年数について逸失利益を請求することになります。

★理解のポイント
□坐骨神経障害や坐骨神経麻痺は、診断されずに埋もれていることがあります。
この知識を有し、指摘ができれば、弁護士として、大きな信頼が勝ち取れます。

□骨盤骨折のシリーズでは、繰り返してきましたが、
骨折後の骨癒合はどうなのか?
変形による12級5号獲得の可能性?
股関節に機能障害を残しているのかどうか?
骨盤骨の変形に伴い、下肢に短縮が認められるか?
左右の股関節、XP正面像の比較で、該当股関節に変形性股関節症をきたしていないか?
大腿骨頭もしくは人工関節の置換術が実施されているか、将来の可能性?
内臓損傷、排尿障害、インポテンツと、その立証?
神経障害もしくは神経麻痺と、その立証?
被害者が女性では、正常産道が確保できているか?
複眼で、後遺障害を検証しなければならず、高度な知識が求められます。