第4回 実務講座 事前学習 6
高次脳機能障害?

頭部

(1) 事前のチェック
相談者、大多数は被害者の家族から基本的な事故情報を聴取、できれば書面で確認します。
高次脳機能障害では、以下の3項目が決定的に重要な情報となります。

☐診断名は?
診断書の傷病名が脳挫傷、びまん性軸策損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳室出血等が記載されているか、確認しなければなりません。
骨折後の脂肪塞栓で呼吸障害を発症、脳に供給される酸素が激減した低酸素脳症も含みます。
傷病名は、肺脂肪塞栓が一般的です。

急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、

ここで、相手にしてはいけない危険な傷病名を紹介しておきます。
頭部打撲、頭部挫傷、脳震盪、頚椎捻挫? これらの診断名で脳損傷を訴えても、高次脳機能障害と認定されることはありません。

代表的なものに、MTBI、外傷性軽度脳損傷があります。
日本でたった1人の整形外科医がこの傷病名を乱発、問題提起をしていますが、厚生労働省、自賠責保険、労災保険は、これを高次脳機能障害とは認めていません。
臨床上、事故後のMRテンソール画像では、異常所見が認められることもありますが、この治療先の脳神経外科部長は、「まだ、サイエンスの領域に到達していない!」 言い切っています。
行政は、MTBIの存在自体を疑問視しています。
したがって、MTBIは専門家が対応する傷病名ではありません。

☐XP、CT、MRIの画像で確認できているか?
受傷直後に急性の血腫が生じたときは、明確な画像所見が残ります。
それは局所性の損傷として重要かつ有効な画像所見となります。
さらに、MRIのT2フレアで脳萎縮、脳室拡大の進行が時系列で描出されていれば、これは高次脳機能障害の遺残を決定づける有効な画像所見となります。

傷病名が、びまん性脳損傷やびまん性軸索損傷では、点状出血を探すことになります。
微細な出血は見逃される危険性があり、精密なMRI検査、DWI:ディフージョン撮影が望まれます。
受傷から時間が経過しているときは、T2スターなどの追加検査が必要です。

このように「どのような脳損傷の形態か?」を把握し、「どの時期にどのような画像検査をすべきか?」これを相談者に指し示すことができなければ取り返しのつかないことになります。
つまり画像所見がないために障害が認められなくなってしまうのです。

☐頭部外傷後の意識障害が少なくとも6時間以上続いていたか?
もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続いていたか?

意識障害、半昏睡~昏睡状態で呼びかけに開眼・応答しない状態、JCSが3~2桁、GCSが12点以下の状態が少なくとも6時間以上続いていること。
または軽度意識障害としてJCSが1桁、GCSが13~14点の状態、もしくは健忘症が少なくとも1週間以上続いていることが認定要件となっています。

通常、脳に器質的なダメージが加われば、意識障害の状態に陥ります。
意識障害も程度の差があり、完全に意識が喪失している状態、朦朧とした状況が数時間~数日続く状態のものもあります。

明確な画像所見があれば、障害の存在は否定されません。
しかし画像所見が不明瞭、もしくは脳萎縮・脳室拡大の器質的変化に乏しいときは、意識障害の有無・度合いが脳損傷の有無を推定させる一つの要素となります。
認定要件である意識障害の存在は、びまん性軸索損傷の事実を裏付けているのです。

相談を受けた弁護士は、画像所見が決定的ではないときは、画像の追加検査を受ける指示はもちろんのこと、早期に、「頭部外傷後の意識障害についての所見」 を初診の治療先に出向いて、記載を依頼しなければなりません。
初診時の意識障害とその経過は、救命救急で記載されています。
ところが一名を左右するときは、正確な記録が脳神経外科に引き継がれていないこともあります。
また受傷から時間が経過していれば、主治医の転勤等でカルテの記録しか残っていないこともあり、いずれも恐ろしく達筆で、正確な数値が曖昧となってしまうことも経験しています。
とにもかくにも、急がなければならないのです。

画像も不明瞭、意識障害もなしとなれば、万事休すです。
いかに専門家が動いても、障害は否定されてしまうのです。