このページでは、無保険者障害保険と人身障害保険について、2012年4月に京都府下で起こった重大交通事故を通して検討します。

保険屋さんの事情

いずれも京都ですが、2012年4月に祇園と郊外の亀岡で悲惨な交通事故が発生しています。

保険屋さんは、「弊社の契約でなければいいな?」 祈る思いでテレビニュースを見ています。
査定の目標は損害率の改善です。
損害率とは、集めた保険料と支払った保険金の対比のことですが、査定部門は、この比率を下げることが至上命題となっているのです。
そのために、個々の損害賠償額の支払い、逸失利益では、意図的に低い喪失率の設定、喪失期間の理由のないカット、過失割合の水増し、出鱈目な慰謝料計算等々、非常識な払い渋りで日々努力を続け、コツコツと積み上げています。

しかし、新聞紙上を賑わす大事故が発生すれば、その手のコシャな努力は水の泡となります。
「損害率、知ったことか?」 ショボイ努力が水泡に帰しても、そんなヤケクソにはなりません。
一層の払い渋りで、会社に貢献すべく、大々的、積極的に払い渋り活動にいそしむのです。行列をなして食物を巣穴に運ぶアリと同じ習性であり、払い渋りは本能として凝り固まっているのです。これが、悲しいかな、保険屋さんの保険屋さんたる由縁、サガなのです。

亀岡の交通事故

さて、亀岡の交通事故、弁護士としては、どう捉えればいいのでしょうか?
加害者は18歳で無免許とのことですが、これは被害者の損害賠償には影響を与えません。
事故車の写真
①まず、加害車両に任意の自動車保険契約がなされていたかに着目します。
契約があれば、年齢条件? 盗難車? チェックすべきことはありますが、ひとまずは安心です。

②次に、任意の自動車保険が適用できないとなると、通勤途上や業務中で労災保険の適用が受けられるか?
被害者が国保ではなく、社会保険に加入しているか?
無保険車傷害保険の適用は可能か?
そのためには、それぞれの被害者の自宅に自家用車があるか?
その自動車には、任意保険契約がなされているか?
人身傷害保険に加入しているか? 加入のときは、保険金はいくらか?

こんなことが、頭を駆け巡らなければ、交通事故の専門家とは言えません。

①通勤途上や業務中で労災保険の適用が受けられるか?
治療費や休業損害、当面の緊急避難先を考えてのことです。

②社会保険に加入しているか?
休業損害として、傷病手当金66%の請求ができるからです。

③無保険車傷害保険の適用は可能か?
そのためには、それぞれの被害者の自宅に自家用車があるのか?
その自動車には、任意保険契約がなされているのか?
そして、人身傷害保険に加入しているのか? 加入のときは、保険金はいくらか?

本命は無保険車傷害保険金の請求です。
無保険車傷害保険に請求するには、被害者宅に自家用車があって、任意の自動車保険に加入していなければなりません。さらに、無保険車傷害保険は、被害者が本件事故で死亡するか、後遺障害を残すことが適用の条件とされています。

事故は発生したばかりであり、死亡はともかく、現時点で後遺障害を議論する場面はありません。となると、当面発生する損害、治療費や休業損害、入院雑費等々は、人身傷害保険から回収しなければならないことになります。

最後の最後ですが、被害者に後遺障害が認定されても、「保険屋さんと話し合って無保険車傷害保険の支払を受ける?」そんな選択肢はどこにもありません。

必ず、加害者を相手取って損害賠償請求訴訟を立ち上げます。
そのことは、加入の保険屋さんにも訴訟告知をしておきます。
訴訟告知により、判決の効力が無保険車傷害保険金に及ぶからです。
地裁の判決額を無保険車傷害保険に請求して、本件の交通事故が一件落着するのです。

ここまでの知識があり、被害者側を正しく誘導することができて、勝利の方程式を描ける弁護士が、日本に何人いるのか? 弁護士は頑張って学習しなければなりません。

昭和49年3月、日弁連の大反対がありましたが、示談交渉つき保険は発売されました。
無保険車障害保険を使える場合があります。
その際、「任意自動車保険に加入する善良な被害者が交通事故受傷したとき、加害者が任意保険に加入していないことを理由として損害賠償を受けられないのであれば、公平性が保てない!」との理由で対人保険に自動担保されたのが無保険車傷害保険です。
もちろん、保険屋さんの考えではなく、当時の大蔵省が主導したのです。

人身傷害保険が発売されるまで、約款には、無保険車傷害保険の支払基準が明記されていました。
被害者が死亡すること、もしくは後遺障害が残ることが適用の条件となっています。
被害者は歩行者であっても、自転車に乗っていても適用され、保険金は2億円もしくは無制限の優れものですが、この保険の優位性を公表しているのは当社だけです。
毎日、CMを垂れ流しているチューリップ、あ臭さ、あめまさんも無保険車傷害となると無口です。
保険会社の風刺画
5年前、今治の東京海上日動火災の女性担当者は、「自賠責保険、任意保険の両方がないときに限って、無保険車傷害保険の適用をしています」 アッケラカンとのたまいました。
37年勤務した保険屋さんを定年退職し、交通事故110番でメール対応を続けた元センター所長は、「37年間の在職中、無保険車傷害保険を適用したことは、ただの1回もない!」と言いきっていました。

そんなことはともかくとして、無保険車傷害保険の最大のポイントは、加害者に対する損害賠償請求訴訟を先行させること。
つまり、加入の保険屋さんと話し合って、保険屋さんのショボイ基準で示談としてはならないことです。

ここで問題提起です。
最近、損保各社は約款改正を行い、無保険車傷害保険を人身傷害保険に吸収しています。
こうすれば、加害者に対する損害賠償請求訴訟の提起→地方裁判所支払基準による判決の獲得→無保険車傷害保険金請求、この勝利の方程式が描けなくなるからです。
いつでも、保険屋さんのショボイ支払基準で示談解決としなければなりません。
私は、そんなことにはお構いなく、先の勝利の方程式を追求しています。

そして不思議なことに、現在進行形の裁判では、「人身傷害保険に吸収しましたから、地方裁判所支払基準では支払えません?」このことが議論されることはないのです。
粛々と損害賠償請求訴訟は進行し、結果として、保険屋さんは判決相当額を無保険車傷害保険で支払っています。

私の本音は、「人身傷害保険に吸収しており、地方裁判所支払基準では支払えません!」保険屋さんがこれを主張することを期待しているのです。

どうして?
人身傷害保険に未加入の契約者が、たくさん存在するからです。
高い保険料を負担して人身傷害保険に加入している契約者は、問答無用でショボイ任意保険支払基準の適用で押し切られ、保険料の負担を節約して対人・対物のみの契約者には地裁基準が適用されることになるからです。

通常の社会常識から大きく外れており、こんな不公平を、裁判所が認めるはずがありません。
「約款を手直しすれば、なんでもできる?」こんな思い上がりは叩き潰さなければなりません。

ところが、一方で無保険車傷害保険が人身傷害保険に吸収されたとして、慌てふためく?人身傷害保険は、支払額の決められた傷害保険であると、なんの疑いもなく理解しているポンスケ弁護士もソコソコ目立つのです。

弁護士たるもの、ときには髪を振り乱して、果敢に挑戦しなければなりません。
シタリ顔で、「それは認められないでしょう?」 
アッケラカンとのたまうポンスケ弁護士が存在することに呆れ果てています。

私程度に負けるようではお話になりません。
真剣な学習をお願いするものです。