胸部の外傷で紹介する傷病名の中で、もっとも軽傷なもので、後遺障害を残すこともありません。
肩の力を抜いて、学習してください。
過換気症候群
ヒトが生きるには新鮮な酸素が必要であり、呼吸によって吸い込んだ酸素は全身を巡り、細胞の中で消費されて二酸化炭素となり、肺から呼吸によって吐き出されています。
つまり、呼吸とは、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すことなのです。

さて、過呼吸とは、呼吸が速く、浅くなることですが、この発作を目の当たりにすると、間断なく息を吐き続けるのですが、息を吸うことを忘れてしまい、白目をむいて倒れるような印象です。
つまり、ヒトが無意識に行う、自然な呼吸のパターンが崩壊している状態なのです。

これまでの交通事故無料相談会で、複数回を経験しており、最初は、驚愕、狼狽えました。
その後、過換気症候群を知ってからは、慣れっことなり、紙袋を手渡し、この袋の中で反復呼吸をするように指示をして対処しています。
であれば、2、3分で元通りとなり、落ち着きを取り戻しています。

過換気症候群とは、精神的な不安を原因として過呼吸になり、その結果、息苦しさ、胸部の圧迫感や痛み、動悸、目眩、手足や唇の痺れ、頭がボーッとする、死の恐怖感などを訴え、稀には失神することもある症候群のことです。
当然ですが、放置しておいても、この症状で死に至ることはありません。

几帳面で神経質な人、心配症であり、考え込んでしまう人、10~20代の若者に多いとの報告がなされていますが、私が経験しているのは、全て30~40代の女性で、交通事故受傷後に、非器質性精神障害である不安神経症やパニック障害の診断がなされている被害者に限定されています。

医学的な考察を行うと、過換気症候群では、呼気からの二酸化炭素の排出が必要量を超え動脈血の二酸化炭素濃度が減少して血液がアルカリ性に傾き、そのことによって、息苦しさを感じるとされています。血液がアルカリ性に傾くことを、医学では、呼吸性アルカローシスと言います。

そのため、無意識に延髄が反射し、呼吸を停止させ、血液中の二酸化炭素を増加させようとするのですが、大脳皮質は、呼吸ができなくなるのを異常と捉え、さらに呼吸を続けるように命じます。
この繰り返しで、血管が収縮し、軽度では手足の痺れ症状、重度であれば筋肉が硬直します。
それらが悪循環を続けると、発作がひどくなってくるのです。

先に、対処方法としてペーパーバッグ法を説明していますが、現在は、誤った処置とされています。

呼吸の速さと深さを自分で意識的に調整すれば、2~3分で、症状は自然に治まります。
万一発作が起きたとき、周囲の人は、なにもせず、安心しなさいと、被害者を落ち着かせた上で、

①息を吐くことを、患者に意識させ、ゆっくりと深呼吸をさせる、
②吸うことと、吐く比率が、1:2を目指して呼吸をさせる、
③一呼吸に、およそ10秒で、少しずつ息を吐かせる、
④胸や背中をゆっくり押して、呼吸をゆっくりするように促す、
上記の呼吸管理で、二酸化炭素を増やしつつ、酸素を取り込んでいくことが勧められています。

過換気症候群における後遺障害のキモ?

1)過呼吸は、非器質性精神障害が治癒すれば消失することから、障害の対象ではありません。

2)非器質性精神障害については、精神科、心療内科に通院して治療を続けることになります。
過呼吸を緩和する治療や、薬はありませんが、非器質性精神障害の治療が進むと、過呼吸は自然消滅しています。
これまでに、症状固定段階で、過呼吸発作が問題とされたことは1例もありません。

3)非器質性精神障害では、交通事故との因果関係を巡って厳しい審査が行われており、丁寧に立証したとしても14級9号がやっとの状況です。

仙腸関節機能不全
傷病名が頚・腰部捻挫であるのに、歩行もままならない被害者が、おおよそ3年周期で登場します。
大半の主治医はプシコ扱いで、真面目な対応をしてくれません。

※プシコ?
医師仲間の隠語で、psycho consult=精神科医に相談すべき患者を意味しています。
正しく発音すれば、教養豊かな患者は、「俺をキチガイ扱いするのか!」 と激怒します。
それゆえ、プシコと呼んでいるのです。

元国立大阪南病院 整形外科の博田医師は、歩行に支障をきたす激しい腰部痛について、仙腸関節の機能不全を原因とするものと説明しておられ、AKAの独自の理論を学会で発表されています。

脊柱骨の最後の部分は仙骨と尾骨で構成されており逆三角形で骨盤骨に収まっています。
この部分を仙腸関節と呼ぶのですが、この納まり具合がおかしいと歩行に支障を来すような痛みが腰部に発生するとのお考えです。

症状は、歩行障害を伴う、腰部の激痛です。
現在、博田先生は南海高野線 千代田駅前で開業をしておられます。
理学療法を中心に、主に骨盤骨の矯正が治療の中心ですが、歩けなかった被害者が、1回の治療で電車に乗って帰った? そんな被害者を現実に経験していますが、症状は、なぜか、再び繰り返すのを特徴としています。つまり、治癒することはないのです。

このAKA理論は、画像所見を確保できないところに最大のウイークポイントがあります。
画像で説明できないので、残念ながら整形外科学会では認知に至っていません。
このAKA理論は、リハビリ科の理学療法士に信奉者が多いことを特徴としています。
爺さん会は、画像で器質的損傷を立証できないところから、後遺障害として認定していません。

保険屋さんの対応は、むち打ちに同じで、受傷後3、4カ月で治療費も休業損害も打ち切ってくるのが普通、うるさく言うと弁護士から受任通知書が送達され、債務不存在確認請求訴訟へと発展していくのを常としています。

AKA理論の提唱者である博田医師の診断を別にすれば、考えられる精密検査のすべてを実施しても、決め手が現れない被害者に対して、困り果てた医師がこの診断名をつける傾向です。
私ごときが、評価する立場にありませんし、またできません。

仙腸関節機能不全、AKAにおける後遺障害のキモ?

1)腰部に激痛を訴え、歩行もままならない被害者に対して、3DCT、MRIは、矢状断、水平断、冠状断、つまり3面からの撮影を行い、仙腸関節部の器質的損傷を立証しようとしましたが、残念ながら、画像所見を得ることはできなかったのです。

2)画像で器質的損傷を立証できなければ、AKAとして後遺障害の獲得はありません。
したがって、立証と後遺障害の申請から撤退しています。

今は、AKAの傷病名で後遺障害を申請するのではなく、腰椎捻挫としての立証に努力しています。

CRPSに続く難治性の疼痛疾患に線維筋痛症があります。
恒常的、慢性的、持続的な全身の激しい疼痛を主たる症状として、全身の重度の疲労や種々の症状を伴う難治性の深刻な疾患ですが、関節リウマチのような関節の炎症はありません。

血液、尿検査で炎症反応が得られず、脳波、心電図検査を行っても異常所見はなく、XP、CT、MRI画像の撮影でも、明らかな器質的損傷を確認することができません。現在でも、医師が押さえると痛みを感じる=圧痛点が複数の箇所に確認できることで、この傷病名が確定診断されています。

CRPSは、交通事故などの外傷をきっかけとして発症しています。
線維筋痛症では、外傷後に発症する比率は、50%以下と報告されているのですが、50%以下であっても、線維筋痛症の発症のきっかけとして外傷や手術などが指摘されており、外傷後に生じた線維筋痛症の内、約60%は交通事故が原因であるという報告もなされています。
具体的には、下肢の骨折から線維筋痛症の発症率は1.7%であるのに対して、頚部捻挫から線維筋痛症の発症率は21.6%とのデータが明らかにされています。

線維筋痛症の原因については、ウイルス感染説、不眠説、食物アレルギー説、化学物質過敏説、内分泌異常説、自律神経異常説、下行性疼痛抑制系の機能不全説など多くの説がありますが、いずれも、科学的、医学的に明らかにされておらず、原因不明の状態が続いています。

日本では、およそ200万人の患者数と推計されており、男女比では、中年女性が圧倒的です。
2012年6月22日、リリカが、線維筋痛症の薬として保険適応の承認を得ています。

1)2010年の米国リウマチ学会 線維筋痛症の診断基準

リウマチの疼痛範囲
WPI=過去1週間の19カ所の疼痛範囲の数(1項目1点)
□右肩 □左肩 □右上腕 □左上腕 □右前腕 □左前腕 □右臀部 □左臀部 □右大腿
□左大腿 □右下肢 □左下肢 □右顎 □左顎
□胸部 □腹部 □首 □上背 □下背

SS症候=痛みの部位を評価する広範囲疼痛指標
疲労、起床時不快感、認知症状、3つの症状について、過去1週間の重症度レベルを0~3の中から1つ、つけます。
□疲労 0 1 2 3
□起床時の不快感 0 1 2 3
□認知症状 0 1 2 3

SS=一般的な身体症候
□筋肉痛 □過敏性腸症候群 □疲れ/疲労感 □思考または記憶障害 □筋力低下 □頭痛
□腹痛/腹部痙攣 □しびれ/刺痛 □めまい □睡眠障害 □うつ □便秘 □上腹部痛 □吐気
□神経質 □胸痛 □視力障害 □発熱 □下痢 □ドライマウス □かゆみ □喘鳴 
□レイノー症状 □蕁麻疹 □耳鳴り □嘔吐 □胸やけ □口腔内潰瘍 □味覚障害 □痙攣
□ドライアイ □息切れ □食欲不振 □発疹 □光線過敏 □難聴 □あざができやすい □抜け毛
□頻尿 □膀胱痙攣 □排尿痛

0 問題なし、
1 軽い、もしくはほとんどない、または症状があったりなかったりする、
2 中くらい、日常に支障がある、ほとんど常に感じる、
3 強い、持続的、日常生活にかなり支障になる、

3カ月以上、身体全体の痛みが続き、他疾患とは考えにくいこと、
WPIが7以上+SS症候が5以上、または、WPIが3~6+SS症候が9以上のものを、線維筋痛症と認定すると定義されています。

2)厚生労働省研究班による線維筋痛症の重症度

ステージ1 11カ所以上の圧痛点で痛みがあるが、日常生活で重大な影響はない
ステージ2 手足の指などに痛みが拡がり、不眠、うつ状態が続き、日常生活が困難になる、
ステージ3 爪や髪への刺激、温度・湿度変化でも激しい痛みがあり、自力での生活が困難、
ステージ4 ほとんど寝たきり、自分の体重による痛みで、長時間、同一姿勢がとれない
ステージ5 全身に激しい痛み、直腸障害や口の渇き、目の乾燥などで日常生活が不可能

3)専門医の検索

名称 桑名東医療センター 膠原病・リウマチ内科
所在地 〒511-0061 桑名市寿町3丁目11番地
TEL 0594-22-1211
医師 松本 美富士 顧問
月・水・木 完全予約制につき紹介状が必要

名称 福山リハビリテーション病院
所在地 〒720-0031 広島県福山市三吉町4丁目1-15
TEL 084-922-0800
医師 戸田 克広 先生
火・木の8:30~12:30 事前予約が必要

日本線維筋痛症学会 診療ネットワーク
http://jcfi.jp/network/network_map/index.html

4)裁判の判例について

①H18-10-13山口地方裁判所 岩国支部判決 最高裁ウェブサイト

線維筋痛症と交通事故との因果関係を肯定した最初の判決ですが、寄与率を25%、4684万円の請求に対して528万円の支払いを命じたもので、因果関係を認めたとは言え、腰が引けています。

②H20-8-26神戸地裁判決、自保ジャーナル1794号

頚椎捻挫から線維筋痛症を発症したという原告の主張に対し、頚部に加わった外力と線維筋痛症の直接の因果関係が不明である以上、本件事故と線維筋痛症との間に因果関係を認めることができないとして、原告の訴えを退けています。

③H22-12-2京都地裁判決、自保ジャーナル1844号

原告の線維筋痛症の発症に、本件事故によって負った骨盤骨折等の重傷による肉体的精神的ストレスが作用している蓋然性が優にあると認められるとして、後遺障害等級7級を認定、線維筋痛症と交通事故との因果関係を認めています。

④H24-2-28横浜地裁判決、自保ジャーナル1872号

3級の線維筋痛症であるとする原告の主張を退け、7級の慢性広範痛症であると認定しています。
繊維筋痛症を診断した主治医が、圧痛点の触診すら行っていない?
線維筋痛症を一蹴した理由であり、あまりにもお粗末です。

⑤H27-1-21東京高裁判決、自保ジャーナル1941号

④の控訴審です。
本件事故と線維筋痛症の因果関係を否定し、後遺障害を14級9号と認定しています。

線維筋痛症について、方向性が示されたとは言えませんが、説得力のある否定例が目立ちます。
繊維筋痛症では、自賠責保険は、本件事故との因果関係が不明であるとして非該当にしています。
訴訟では、医学的な論争を繰り広げることになり、極めて難しい闘いが予想されます。

線維筋痛症における後遺障害のキモ?

1)交通事故との因果関係について?

交通事故により、捻挫、打撲の傷病を負っても、CRPSや線維筋痛症を発症するのは、ごく僅かです。
CRPSや線維筋痛症になりやすい要因を有する人に外傷が加わって発症したと推測されるのですが、その要因は、現在のところ、解明されていません。
さらに、CRPSや線維筋痛症になりやすい要因があったとしても、本件外傷がなければ、発症しなかったとも推測されるのです。
H27-1-21東京高裁判決では、因果関係の立証と判定について、以下を判示しています。

「訴訟における因果関係の立証は、経験則に照らして全ての証拠を総合検討し、特定の事実が、特定の結果発生を招いた関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することである。
その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」

上記を前提とすれば、線維筋痛症の発生原因は未だ特定されておらず、疼痛の発症要因に限っても、外傷などの外的要因だけでなく、種々の事情による心因性の要因が含まれるとされています。
本件の線維筋痛症の原因も、また未だ特定できていないのです。

そして、本件事故による衝撃の程度が比較的軽度なものと推測されており、本件事故が線維筋痛症による疼痛の発症要因の中で、強いものであったとは考え難いのです。

線維筋痛症による疼痛発症の要因には、本件事故以外にも、種々のものが考えられます。
訴訟上の因果関係の立証としては、本件事故が線維筋痛症を発症させたとの関係を是認しうる高度の蓋然性を認めることは困難です。

最後に、後遺障害の程度は、上記症状を裏付ける他覚的所見が認められておらず、14級9号、局部に神経症状を残すものに該当するにとどまると結ばれています。

本件の訴訟では、繊維筋痛症を診断した主治医が、圧痛点の触診すら行っていないとして、線維筋痛症の傷病名が一蹴されており、あまりにもお粗末です。
にもかかわらず、3級3号の線維筋痛症であるとして、1億円を超える損害賠償請求がなされており、乱暴、かつ、荒っぽい争いでした。
判決では、これらを割り引いて検証する必要がありますが、本件事故により線維筋痛症を発症したことについて高度な蓋然性を立証が必要となると、考え込んでしまいます。

2)CRPSやPTSDでは、どうか?

交通事故により、捻挫、打撲の傷病を負っても、CRPSを発症するのは、ごく僅かな被害者です。
捻挫や打撲、極めて軽度の外傷であっても、CRPSタイプⅠ、RSDは発症しています。
外傷の程度とCRPSの症状の程度には何ら関連がありません。
CRPSになりやすい要因がある人に外傷が加わってCRPSが発症したと推測されるのですが、その要因は特定されていません。
①皮膚・爪・毛のうち、いずれかに萎縮性変化
②関節可動域制限
③アロデニアないしはピンプリック
④発汗の亢進ないしは低下
⑤浮腫
上記の要件を満たしていれば、自賠責保険は後遺障害等級を認定し、裁判でも追認されています。

さて、交通事故で、死ぬような思いをした人でも、全員がPTSDになるわけではありません。
なぜPTSDが起こるのか? 原因が、完璧に解明されたのでもありません。
しかし、外傷後のPTSDでは、臨死体験が確認されれば、因果関係が認められ、自賠責保険も後遺障害等級を認定しているのです。

CRPS、PTSDでは因果関係が認められ、線維筋痛症では、より厳しい因果関係の立証が求められるのは、間尺に合わないことです。
しかし、どうして、あなたに限ってCRPS、PTSD、線維筋痛症となったの?
この謎は、多くをサポートしている私にも、解明できていません。

3)当面の対応は?

まずは、急いで専門医を受診することです。
線維筋痛症を代表する2名の専門医を紹介していますが、
日本線維筋痛症学会 診療ネットワーク
http://jcfi.jp/network/network_map/index.html
上記から、全国の専門医を検索することができます。

専門医の受診で、線維筋痛症が確定診断されたのであれば、セロトニン系の抗うつ薬、抗痙攣薬のリリカなどの内服で、改善、治癒を目指すことになります。

梨状筋症候群1
梨状筋症候群2
梨状筋は、お尻の中央部の仙骨から、大腿骨の頚部に伸びており、股関節を外旋させ、足先を外に向ける働きをしています。
他方、坐骨神経は、骨盤から出てきた後に梨状筋の下部を通過します。

梨状筋の中を走行する坐骨神経が、交通事故外傷などで、臀部を強烈に打撲するか、股関節捻挫により、圧迫、絞扼されることにより、坐骨神経痛を起こし、臀部の疼痛、坐骨神経の走行領域の下肢に放散する疼痛やしびれをきたす疾患のことを梨状筋症候群と呼んでいます。
坐骨神経の、絞扼性神経障害です。

主たる症状は、臀部痛と座骨神経痛、間欠性跛行であり、数分の歩行で両足または、片足全体に痛み、しびれなどが出現し、歩けなくなるのですが、しばらく休息すると、再び歩行ができるのですが、これを繰り返します。

症状的には、腰椎椎間板ヘルニアによる根性坐骨神経痛と酷似しており、以下の鑑別診断が行われています。

①梨状筋郡、坐骨神経に圧痛があり、チネル徴候が陽性で放散痛を再現できること、
②臀部打撲などの外傷が認められ、坐位や特定の肢位、運動で疼痛が増強すること、
③圧痛が局所麻酔の注射で消失、または軽減すること、
④ラセーグは陰性、誘発テストであるKボンネットテストが陽性であること、
Kボンネットテスト

Kボンネットテスト

⑤神経症状は腓骨神経領域に強いこと、
⑥腰椎疾患が除外できること、

ヘルニアが、腰部の神経根を圧迫すると根性坐骨神経痛が起こるとされており、腰椎に椎間板ヘルニアが認められるときは、ヘルニアによる坐骨神経痛という診断が優先されます。

治療方法は、保存療法が中心です。
安静が指示され、非ステロイド系抗炎症剤や筋弛緩剤、ビタミンBの内服で痛みを緩和され、梨状筋ストレッチのリハビリが行われています。
これらで改善が得られないときは、神経ブロック、梨状筋ブロック療法が実施されています。

神経ブロック療法でも効果が得られないときは、脊椎の専門医による梨状筋切離術となりますが、私は、1例の経験もありません。

梨状筋症候群における後遺障害のキモ?

1)先の症状を訴えても、ほとんどの整形外科医は、座骨神経痛や腰椎椎間板ヘルニアと診断し、MRIの撮影は指示しても、その後は放置することが一般的です。

2)放置されても、自然治癒すれば問題はないのですが、重量物を扱う仕事や中腰作業で腰部に大きな負担がかかる仕事、デブでは、症状は悪化します。

3)無料相談会では、杖をついて参加される被害者もおられます。
受傷機転を確認、MRIをチェックしてヘルニア所見が認められないときは、医師ではありませんが、私が梨状筋症候群を疑います。

4)治療先に同行したチーム110は、梨状筋症候群の可能性を説明し、後遺障害診断を受けます。
とっくに、6カ月以上を経過しており、今さら、梨状筋ブロックや切離術は選択しません。
先に、後遺障害等級を申請し、その後の健康保険による治療で改善を目指します。
等級は、14級9号、12級13号の選択です。

事故直後から、先の症状を訴えていれば、
①梨状筋郡、坐骨神経に圧痛があり、チネル徴候が陽性で放散痛を再現できること、
②臀部打撲などの外傷が認められ、坐位や特定の肢位、運動で疼痛が増強すること、
③圧痛が局所麻酔の注射で消失、または軽減すること、
④ラセーグは陰性、誘発テストであるKボンネットテストが陽性であること、
⑤神経症状は腓骨神経領域に強いこと、
⑥腰椎疾患が除外できること、
上記の6つを丹念に立証していくことにより、等級は認定されています。

頭部に直接の衝撃が加わり、硬膜下・くも膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷などの脳損傷では、通常、6時間以上の昏睡を含む意識障害が生じ、CT・MRI画像においても、脳の器質的損傷を捉えることができ、これを頭部外傷後の高次脳機能障害と呼んでいます。
この16年間、多数例を経験しており、交通事故110番が立証面で、最も得意としている分野です。
意識障害・傷病名・画像所見と高次脳機能障害認定の相関性
1であれば、高次脳機能障害の立証に、苦労はありません。
2でも、なんとか頑張って立証に漕ぎ着けます。
3となれば、高次脳機能障害の認定は極めて困難となります。
4は論外で、高次脳機能障害として審査されることはなく、非該当です。
軽度脳損傷、MTBIは4に該当し、高次脳機能障害として評価されていません。

MTBIとは、Mild Traumatic Brain Injury、つまり軽度脳外傷の略語で、外傷性のない、もしくは希薄な頭部の受傷により、脳障害を残すものとしておおむね認識されています。

症状の臨床実績は比較的新しく、90年代、湾岸戦争で爆風にさらされた帰還兵に一定の認知・記憶・情動障害を残す例があり、TBI、外傷性脳損傷の診断名がクローズアップされました。
それらには、必ずしも脳損傷、脳外傷が認められないケースも多数含まれており、M、マイルドをつけてMTBIという呼び方で一般化されました。
これはベトナム戦争の帰還兵が、PTSD、心的外傷後ストレス障害と診断され、傷病名が一般化された経緯によく似ています。

高次脳機能障害は、脳の器質的損傷の存在が前提であり、MTBIとは一線を画します。
したがって高次脳機能障害が疑われる障害を残しながら脳外傷がない為、MTBIと位置づけられる被害者が少なからず存在しているのです。
当然、自賠責や労災の基準に満たないこれらMTBI被害者に、後遺障害等級の認定はありません。
平成22年9月の東京高裁判決で障害を認める判決がでたとされましたが、判旨をみるとMTBIが障害認定されたとは読み取れません。
この判決も周囲の誤解・曲解を呼び、依然として灰色的な存在が続いています。
高次脳機能障害をサポートする我々にとって、まさに奥歯に刺さった棘のようなものです。

戦地からの帰還兵には、賠償問題もついてまわり、なにかと障害が騒がれています。
今回の高次脳機能障害委員会でもMTBIの定義と扱いについて相当のボリュームを割いています。
そこで、WHOにおけるMTBIの定義について確認してみます。

1)WHOによるMTBIの定義

WHO 共同特別専門委員会におけるMTBIの診断基準
MTBIは、物理的外力による力学的エネルギーが頭部に作用した結果起こる急性脳外傷である。
臨床診断のための運用上の基準は以下を含む
①以下の一つか、それ以上、
混乱や失見当識、30分あるいはそれ以下の意識喪失、24時間以下の外傷後健忘期間、そして、あるいは一過性の神経学的異常、たとえば局所神経徴候、けいれん、手術を要しない頭蓋内病変、
②外傷後30分の時点、あるいはそれ以上経過しているときは、急患室到着の時点で、グラスゴー昏睡尺度得点は13~15
脳しんとうとMTBI

ちょっとした脳震盪でも、MTBIを発症する?

上記のMTBI所見は、薬物・酒・内服薬、他の外傷とか他の外傷治療、例えば、全身の系統的外傷、顔面外傷、挿管など、他の問題、例えば心理的外傷、言語の障壁、併存する医学的問題、あるいは穿通性脳外傷などによって起きたものであってはならない。

2)平成23年新認定システム ~ 委員会における専門医の意見

続いてMTBIについて、今委員会における専門医の意見を検証します。

片山医師の意見陳述
片山医師は脳神経外科学が専門であり、当委員会の検討対象となっている1回限りの軽症頭部外傷により遷延する重篤な症状あるいは障害が発生することがあるかという点について説明を行った。

課題1
1回だけのMTBIにより、遷延、3カ月以上する重篤、社会生活が困難な症状あるいは障害が発生することがあるのか?
受傷直後から数日ないし数週間までは、頭痛やめまいなどの愁訴や、記憶障害および注意障害、不安および抑うつなどの症状が持続することがある。
これらの症状は、受傷後しばらく脳の機能的障害および器質的障害の影響を受けるために起きると考えられる。
しかし、これらの症状は徐々に軽快し、一般的には3カ月以内に消失する。
ほとんどが受傷後3~12カ月以内に回復する。
ただし、一部の患者ではこれらの症状が遷延したり遅発したりすることがある。

コメント

原因について、「器質的損壊」 には言及しないものの、「器質的障害」 の影響としているところに注目しなければなりません。
しかし、症状は一部の例外を除いて3~12カ月以内に回復する、としているのです。
あくまで一過性の症状であると捉えています。
では長く症状が続く場合、その原因は?

課題2
現実に症状の遷延や遅発の事例は、脳損傷に起因するものといえるか?
遷延ないし遅発する症状の原因を、脳の器質的障害=脳損傷に求めることはできない。
遷延ないし遅発する症状には、脳損傷とは関係のない要因が絡んでいると考えられている。
これには、身体的には疼痛など、精神的には外傷後ストレスや不安ないし抑うつ、人格的には行動性向など、社会的には家族や職場などでのストレス、訴訟や補償などの要因が含まれている。

しかし、軽症頭部外傷による脳の機能的障害ないし器質的障害(脳損傷)による症状が消失する前に、これらの要因が絡むことによって、症状が遷延したり遅発したりしたときには、軽症頭部外傷を原因とする症状と見倣すべきであるという考え方もある。

コメント

脳損傷であることをきっぱり否定しています。
他の痛みから派生する、精神的なもの、その人の性格や被害者意識が原因であると分析しています。
また、心因性の障害であるとしても、長引くその症状のきっかけとなったとの見方もあります。
これは解釈論であって白黒つく話ではありません。
いずれにしても、脳損傷のない脳障害はない! ハッキリ断定しています。

課題3
特に、受傷による意識障害がなく、形態画像でも脳損傷を検出できないようなときはどうか?
意識障害や記憶障害などを起こしていなければ、器質的脳損傷を起こすことはないと考えられる。
このようなとき、遷延ないし遅発する症状の原因を、脳の器質的脳損傷に求めることはできない。

コメント

意識障害がなく、健忘(記憶障害)もなければ、脳損傷が存在する筈がない。
したがって、症状の継続の原因は脳損傷ではない。
この見解は、全くぶれていません。
現状の高次脳機能障害の認定基準とは一線を画すものということになります。

脳損傷の有無によって高次脳機能障害とMTBIは明確な区別がされています。
この認識は変わっていません。
そして「一過性であること」、「回復するもの」、「精神的なもの」 と断定しているのです。

3)平成23年9月の高裁判決

今委員会でも無視することはできず、以下のようにまとめられています。

D委員、E委員による意見発表
明確な意識障害や画像所見がなく、後遺障害9級、ただし30%の素因減額を適用を認定した裁判例、東京高裁平成22年9月9日判決、H22年(ネ)第1818号、同第2408号にづいて、報告がなされた。
①本件事案について、一審の東京地裁は事故で脳外傷が生じたことを否定して後遺障害14級を認定したが、東京高裁はこれを認め、後遺障害9級を認定した上で、損害賠償額の算定において、「心的要因の寄与」 を理由として30%の素因減額を行っている。

コメント

つまり、東京高裁判決では、画像上明らかではないが、なんらかの脳外傷があったのだろうと推論をもって障害の存在を認めています。
しかし、この認め方も灰色で、心因性の影響も捨てきれず、損害額の70%だけを認めたのです。
これを、支援団体は、MTBIの障害認定に風穴が空いたと歓喜していますが、私は、原因不明ではあるが、現状の障害の重篤度を考慮した結果であって、MTBI自体の障害認定はしていないと、受け止めています。

②東京高裁は因果関係の判断にあたり、最高裁昭和50年10月24日判決、ルンバール事件判決を引用しています。同最高裁判決は、因果関係を判断する上で、自然科学的な証明まで求めなくて良いことを述べたものである。

東京高裁が因果関係の判断に関する最高裁判決を引用した上で判断した点と、損害額の算定において、「心的要因の寄与」 を理由とする素因減額、最高裁昭和63年4月21日判決参照を行っている点とを考え合わせれば、東京高裁は、脳に器質的損傷が発生したか否かという点、被害者の訴える症状の全てが脳の器質的損傷によるものか否かという点の双方について、悩みながら判断したという印象を受ける。

コメント

自然科学的な証明を画像所見と置き換えるなら、これは画期的な判断です。
しかし引用した最高裁判例は35年前のルンバール事件で、これは医療過誤、医療事故における医師の治療行為の正当性が争われたものです。
ここからの引用は苦し紛れ、強引さを否めないと考えられるのです。
医学的な判断をする=裁判官の苦悩は毎度のことで、医師が理解できないものを悩みながら、判断しているのです。

③東京高裁は、事故直後に強い意識障害がなくても、脳外傷は生じうるとした。
この点について加害者側は、事故後にきちんと事故状況の説明をしているし、ましてや自分で車を運転して帰っているのだから、意識障害はないだろう”と主張したが、高裁は、だからといって脳外傷が生じていないとは言えないと判断している。
しかしながら、脳外傷の有無に関する東京高裁判決の論理展開は、「提出された診断・検査結果の内容と被害者側医師意見書を考えると器質性の脳幹損傷が起こった。」 というのみであり、他方、加害者側から出てきた意見書については単純に、「採用できない。」 と否定するだけであって、脳外傷の判断における医学的意見の採否の理由は十分に説明されておらず、また、被害者に発生した神経症状や所見、被害者側が主張するものについても、どう評価すべきかの検討が十分ではないと思われる。

コメント

本判旨では、意識障害なしの証拠不十分でも実際の症状、治療経過、医師の診断によって脳損傷が推定できるとし、「事故直後、症状がなかった。」 から脳障害はないと主張する被告の反論を採用しなかったにとどめています。
したがって、MTBIの障害性には、なんらの結論も出していません。
原告は上告すると聞いています。
最高裁で決着がつくのか? 再逆転判決、やはり障害はないとなるのか? 注目しているところです。

4)MTBIのまとめ

脳外傷の画像所見がなくても、脳損傷はあり得るのか?
意識障害がなくても、脳損傷はあり得るのか?

これら2つの問題は、今もなお、明解な結論が出ていません。
現状では、画像所見・意識障害がなければ、原則、脳損傷はないと診断されています。
先の高裁判決も、極めて限定的に、被害者救済の見地から判示したもので、今後、同様の裁判が積み上げられるとしても、認定されることが増加するとは考えられません。
これまでも、MTBIと診断された複数の被害者が、無料相談会に参加されているのですが、中でも、強烈な印象を受けた2例を簡単に紹介しておきます。

最初は、道路を横断しようとしたとき、前を通り過ぎるタクシーと大腿部がかするように接触し、よろけて転倒、それに気づかないタクシーを怒鳴りながら、走って追いかけ、停車させたとのことです。
このような事故発生状況ですが、数日を経過すると、めまい、頭痛、内臓疾患などの不定愁訴が出現し、特定の医師の診察を受け、MTBIと診断されています。

もう1つは、信号待ち停止中に追突にあった被害者で、事故受傷から2年を経過して、やはり特定の医師からMTBIと診断されています。
医師の指示で受けた拡散テンソル画像で、脳の器質的損傷を立証できたとのことで、鼻息も荒かったのですが、私に言わせれば、その器質的損傷が本件事故に起因したものか、この肝心なポイントは立証できていないのです。

交通事故110番では、いわゆる高次脳機能障害で苦しんでおられる被害者のサポートで手一杯であり、MTBIの対応には、消極的です。

5)最後に、現在、MTBIを支援している弁護士の意見

①軽度脳外傷の軽度とは、あくまで事故後の意識障害レベルが軽度であったという意味に止まり、症状それ自体が軽度であるという意味ではなく、症状が慢性化したときは、むしろ重度の後遺障害を残存することが多いことに注意すべきである。

②自賠責保険は、脳損傷の診断基準として、国際基準に比べて異常に突出した高いハードルの診断基準を設定し、裁判所も自賠責保険の判断を追認する傾向が顕著である。
日本の医療従事者の大半は2004年WHOの軽度外傷性脳損傷の診断基準に精通していない。
そのため、脳損傷であるのに、そうでないと否定して、被害者に泣き寝入りを強いている現実がある。

CSFH は、 Cerebro Spinal Fluid Hypovolemia の略語です。

CSFH は、 Cerebro Spinal Fluid Hypovolemia の略語です。

CSFH の診断基準

日本神経外傷学会に参加する脳神経外科医が中心となって、頭部外傷に伴う低髄液圧症候群の診断基準をまとめています。
この作業部会委員には、以下の医師が参加されています。

有賀徹 委員長=日本救急医学会理事 昭和大学病院副院長
阿部俊昭=慈恵医科大学病院 脳神経外科教授
小川武希=慈恵医科大学病院 救急部診療部長
小沼武英=仙台市立病院副院長、脳神経外科部長
片山容一=日本大学付属板橋病院 脳神経外科部長
榊寿右=奈良県立医科大学教授
島克司=防衛医科大学教授
平川公義=東京医科歯科大学教授

1)診断基準のうち、前提となる基準は、

①起立性頭痛

国際頭痛分類の特発性低髄液性頭痛を手本として、起立性頭痛とは、頭部全体に及ぶ鈍い頭痛で、坐位または立位をとると 15 分以内に増悪する頭痛と説明されています。

②体位による症状の変化

国際頭痛分類の頭痛以外の症状としては、項部硬直、耳鳴り、聴力の低下、光過敏、悪心、これらの5つの症状です。

次に大基準として、

①MRIアンギオで、びまん性の硬膜肥厚が増強すること

この診断基準は、荏原病院放射線科の井田正博医師が、「低髄液圧の MRI 診断の標準化小委員会」 ここで提示されている基準に従います。

②腰椎穿刺で低髄液圧が 60mmH2O 以下であることが証明されること

③髄液漏出を示す画像所見が得られていること

この画像所見とは、脊髄MRI、CT脊髄造影、RI脳槽造影のいずれかにより、髄液漏出部位が特定されたものをいいます。
前提となる基準 1 項目+大基準 1 項目で、低髄液圧症候群= CSFH と診断されます。

CSFH は、大きなくしゃみや尻餅をついても発症すると言われており、これが外傷性であると診断するための基準としては、外傷後30日以内に発症しており、外傷以外の原因が否定的とされています。

上記をまとめると、

①起立性頭痛または、体位によって症状の変化があり、

②MRIアンギオで、びまん性硬膜肥厚が増強するか、腰椎穿刺で低髄液圧60mmH2O以下であることもしくは髄液漏出を示す画像所見が得られていること、

③そして、外傷後30日以内に発症しており、外傷以外の原因が否定的なもの、

上記の3条件を満たしたものに限り、外傷性CSFHと診断されることになりました。

裁判所の判決動向

H18-9-25、横浜地裁~H19-11-27、東京地裁、この間に 9 件の訴訟が提起されていますが、いずれも、CSFH は否定されています。
先の診断基準が公表されたのは、H19-2-20ですが、それ以降の4件は、この診断基準をベースにして認定が退けられています。

特筆すべきは、
RI 脳槽造影による漏出は、脊椎腔穿刺の際にできた針穴から漏出している可能性が高い?
RI 脳槽シンチの所見は個人差が大きく、診断基準とするに批判的な見解が多い?
つまり、RI 脳槽造影に批判的な判決が目立っています。

私のこれまでの経験則でも、脳槽シンチ後に症状が悪化した被害者が30名以上おられます。
そして、100 例を超える経験則で、上記の診断基準を満たすものは、1例もありません。

脳脊髄液減少症=CSFH、東京高裁の判決

先に横浜地裁が、H20-1-10にCSFHを認める判決を下していますが、H20-7-31、東京高裁は、控訴棄却を決定、1 審判決を支持しています。

H16-2-22、布団販売業の42 歳男子が乗用車を運転、交差点を直進中、対向右折車の衝突を受けたもので、事故受傷から14カ月後にCSFHの確定診断がなされています。
①本件事故により、頭部挫傷の診断を受けていること、
②初診の治療先でも頭痛を訴え、カルテには、眼の奥が痛いとの記載があること、
③経過の治療先のカルテにも、右眼の裏が痛いとの記載があること、
④頭痛に程度の差は認められるが、右眼の奥ないし裏が痛むという点で一貫性を有している、
⑤頭痛についても、身体を横にして休んでいると和らぐというもので、起立性頭痛の症状と符合、
⑥何より、EBPの治療で完治していること、

上記の理由により、 CSFH が本件事故による衝撃ないし外傷に起因するものであると推認することができると判断、本件事故との因果関係を認めました。
さて、この判決、CSFH と交通事故受傷の因果関係を認めた画期的なものなのか?
私は、保険屋さんの主張があまりに短絡で、結果として、転けたに過ぎないと評価しています。

頭部外傷に伴う CSFH の診断基準では、
①起立性頭痛または体位によって症状の変化があり、
②造影 MRI でびまん性硬膜肥厚が増強するか、腰椎穿刺で低髄液圧60mmH2O 以下であること、もしくは髄液漏出を示す画像所見が得られていること、
③そして、外傷後30日以内に発症しており、外傷以外の原因が否定的なもの、
上記3つの条件を満たしたものに限り、外傷性CSFH と診断されており、本件も、この 3 条件を満たしています。

本件は、当初、保険屋さん側から債務不存在確認請求訴訟が提起されています。
被害者側の反訴により、損害賠償反訴請求事件となったものです。
さらに、保険屋さんは、当初、CSFHと本件事故の因果関係を認めているのです。
後に、錯誤によるものとして撤回していますが、横浜地裁は、時機に遅れた主張で、禁反言の原則からも許されないと、厳しく指摘しています。

ともあれ、CSFHは先の3つの診断基準を満たせば、事故との因果関係が認められる傾向です。
しかし、現実の相談では、3つの条件を満たすケースは、極めて少数例です。
むしろ、頚部交感神経の暴走による、バレ・リュー症候群の重症例が大半と思われるのです。

①何でもかんでも CSFH と鼓舞するグループ、
②これに乗せられたマスコミ、
③そして、これをお金儲けに利用している治療機関、

大方の責任は、上記の三者にあります。

低髄液圧症候群=CSFHは、健保で治療が認められている傷病名です。
NHKのクローズアップ現代でさえ、被害者が30万円を窓口で支払う場面を放映していました。
どうして、もう少し深く突っ込めないのか? この点が情けなく、残念でなりません。

脳脊髄液減少症、CSFHにおける後遺障害のキモ?

1)被害者からの電話やメール相談に対しては、3条件を満たしているかをチェックします。
満たしていると思われるときは、各地で実施している交通事故無料相談会で面談します。

診断書、診療報酬明細書などを検証し、3条件を満たしていることが確認できたときは、後遺障害の立証について、チーム110がサポートを開始します。
後遺障害診断書を回収、自賠責保険に対して被害者請求で申請します。

2)それでも、現時点では、厚生労働省が事故との因果関係を認めておらず、爺さん会は、それを理由として非該当の結果を通知してくると予想しています。

非該当では、直ちに、自賠・共済紛争処理機構に対して紛争処理の申立を行います。
つまり、被害者請求の時点で、紛争処理の申立書の作成も完成させておくのです。
自賠・共済紛争処理機構と言っても、爺さん会の屋上に屋根をかけた組織で、常識的には保険屋さん寄りです。余程のことが起きない限り、非該当の結論は変わりません。
ここまでは、訴訟に至る儀式のようなものです。

3)この段階で、交通事故に長けた弁護士に委任、本件の損害賠償請求訴訟を立ち上げます。
3条件を満たしている被害者は、ご相談ください。

昭和30年代、タイピストや電話交換手の職業で、若い女性に、肩から上腕・肘・前腕・手指の痛みや痺れ、肩凝り、目の疲れ、背部のだるさを訴えるケースが多発し、社会問題となりました。
上肢を同じ位置に保持し、反復使用する作業により、神経・筋肉に疲労を生じた結果、発症する機能的・器質的障害と判断した労災保険は、これを職業病として認定したのです。
そのときに、頚肩腕症候群と名付けたのです。

被害者の診断書に、(外傷性)頚肩腕症候群と記載されたものを、ときおり見かけますが、交通事故外傷は、長時間の同一姿勢や反復作業を原因として発症したものではありませんので、厳密な意味では、交通事故で頚肩腕症候群を発症することは、あり得ません。
頚肩腕症候群のテストの様子
しかし、頚部捻挫で、頚部、肩、上肢~手指に痺れなどの神経症状を訴える被害者に対して、自覚症状の経過から、頚肩腕症候群と診断する医師もいるのです。
昭和30年代から脱却できていないお爺ちゃん医師なら、転院すべきですが、考えてみれば、症状を具体的に示している傷病名で、分かりやすいのです。
それほど、気にすることでもありません。

もう1つ、最近では、肩凝りが、頚肩腕症候群と呼ばれています。
医師ですから、肩凝りなどではなく、頚肩腕症候群と権威を高める診断としているのです。
ついでですから、肩凝りも学習しておきます。

肩凝りでは、頚部、項部、頚部のつけ根から、肩、背中にかけて張り、凝り、痛みを発症し、ひどいときには、頭痛や吐き気、眼のかすみ、めまいを伴うこともあります。

肩凝りに関与する筋肉
肩凝りに関与する筋肉

肩凝りは、筋肉の過労で生まれる炎症ですが、一般的には僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋の硬化が指摘されていますが、慢性化すると、頚部から肩にかけてのほとんどの筋肉が硬化しています。

首や背中が緊張するような姿勢での作業、猫背や前かがみ、運動不足、精神的なストレス、なで肩、連続して長時間同じ姿勢をとること、ショルダーバック、夏場では、冷やし過ぎなどが原因となります。
肩こりの原因
肩凝りに対しては、同じ姿勢を長く続けない、蒸しタオルなどで肩を温めて筋肉の血行を良くする、適度な運動を続ける、入浴で身体を温め、リラックスするなどの予防が必要です。

治療では、筋肉の血流改善や筋肉のコリをやわらげ筋力強化をする運動療法、蒸しタオルで肩を温める、入浴などの温熱療法が併用され、薬物療法として、筋弛緩剤、パップ剤、局所注射などで鎮痛消炎効果を高めています。

頚肩腕症候群における後遺障害のキモ?

1)診断書に、頚肩腕症候群と記載されていても、主治医の認識は頚部捻挫です。

不安なら、「えっ、肩凝りですか?」 驚いた様子で質問すれば、分かります。
もし、「その通り、肩凝りですね!」 そんな回答がなされたら、直ちに転院してください。

2)リハビリ設備が充実、患者数の多い整形外科であれば、安心して通院を続けてください。

①1カ月に、10回以上のリハビリ通院を継続すること、
真面目な通院は、症状の存在を裏付けることになります。

②できるだけ早期、2カ月以内にMRI検査を受けること、
頚部捻挫では、末梢神経障害が後遺障害の対象です。
XP、CTは、骨折をチェックする検査であり、末梢神経は、MRIでないと確認できません。

③誰に勧められても、整骨院、接骨院には、絶対に通院しないこと、
交通事故の治療は、医師免許を有し、診断権が認められている医師に委ねられています。
整骨院、接骨院は医師ではなく、当然、診断権が認められていません。
つまり、傷病名を診断することも、診断書を発行することも禁じられているのです。
治療ではなく、施術としての認識で、施術は治療実績として評価されません。
整骨院、接骨院で施術を続けた被害者には、ほとんどで後遺障害が否定されています。

上記の3つの条件を守り、受傷から6カ月で症状固定を決断、後遺障害診断を受けるのです。
そして、後遺障害の申請は、これも絶対に、被害者請求としてください。
であれば、ほとんどで14級9号の後遺障害が認定されます。

3)弁護士費用特約に加入しているときは、事故後の早々に弁護士委任とします。

弁護士は、法定代理人ですから、保険屋さんは、あなたに直接、連絡することができなくなります。
あなたは、保険屋さんから嫌味を言われることなく、治療に専念することができます。

4)専業主婦に14級9号が認定されると、保険屋さんの提示額は、せいぜい80万円前後ですが、弁護士が地裁基準で請求する損害賠償額は300万円を突破します。

弁護士費用特約の適用では、弁護士費用の負担は0円、翌年の保険料も上がりません。

未加入でも、平均的な弁護士費用は、20万円+10%ですから50万円程度です。
多くの弁護士は、着手金無料で対応していますから、解決時の精算となり、委任したときの費用負担は発生しません。

後遺障害が認定されたなら、その後の解決は弁護士に委任する! これが勝利の方程式です。

頚部捻挫では、頚部・肩~上肢・手指の重さ感、だるさ感、痺れが、代表的な神経症状です。
MRI撮影では、C5/6、6/7の左右いずれかの末梢神経=神経根が圧迫されている、あるいは、通り道が狭められている画像所見が得られます。
これで、自覚症状がMRI画像で立証できたことになり、圧迫のレベルによって、14級9号、12級13号の後遺障害等級が認定されているのです。
ところが、痺れの自覚症状があるのに、MRIを撮影しても画像所見が得られないことがあるのです。
胸郭出口症候群の解説1
胸郭出口症候群の解説2
胸郭とは12の胸椎、左右12対の肋骨、肋骨と前側で連結する胸骨によって形成されている骨格の構造で、上肢の付け根から胸郭の最上の部分を胸郭の出口=胸郭上口と呼んでいます。
胸郭出口部は、上肢に流れる動静脈や上肢の運動や知覚を担当する腕神経叢の通り道となっており、 腕神経叢は、左右にそれぞれ5本ずつ走行しています。

胸郭出口部にはこれらの他に、骨では鎖骨、第一肋骨、筋肉では前・中・後斜角筋、鎖骨下筋、小胸筋が存在しています。

これらの組織に起こった形態的異常により、血管や神経の通り道が狭くなり、血管や神経が圧迫されたり、引っ張られたりすると、上肢に冷感・疼痛の血流障害や、痺れ・知覚鈍麻・筋力低下の神経障害を発症することになります。

①前斜角筋や中斜角筋、頚部の筋肉の間で圧迫されると斜角筋症候群、
②鎖骨と第1肋骨の間で圧迫されると肋鎖症候群、
③小胸筋部で圧迫を受けると小胸筋症候群、
④先天性の奇形ですが、頚椎にある余分な肋骨で圧迫されると頚肋症候群、
これらを一まとめにして、胸郭出口症候群と呼んでいるのです。

人類は、元々は四足歩行でしたが、いつの日か、二足歩行に進化を遂げました。
その途端、腕は首からぶら下がる状態となったのです。
頚部に衝撃を受け、頚椎捻挫となり、腕を引き上げる力が弱まったのであれば、胸郭出口症候群はあり得る傷病名ではないか? これは私の勝手な想像です。

症状としては、頭痛、肩凝りに加えて、上肢の痛み、痺れ、倦怠感、血行障害として皮膚蒼白、冷感、浮腫、自律神経症状として顔面の発汗異常、嘔気等とさまざまですが、代表的には、上肢の痺れ感であり、これは、神経根症と一致しているのです。
これらの症状が、上肢の挙上運動や持続的な運動で増強してくるのが本症例の特徴です。

強い動脈の圧迫により、疾患のあるほうの上肢が冷たくなる、脈が弱くなる、痛みが生じます。
静脈の圧迫が強ければ、上肢にチアノーゼなどを呈します。

診断は、MRI、血流の状態を判定するドップラー検査、体表の温度を測定し、温度差を判定するサーモグラフィー検査、筋電図に加え、下記に示す検査を総合的に行い、似たような症状を呈する他の疾患=頚椎神経根症を除外、鑑別して確定されています。
胸郭出口症候群のテスト

①Morleyテスト

鎖骨上窩を圧迫すると、上肢が痛みます。

②Wrightテスト

肘のレベルまで両手を上げた状態で、橈骨動脈が触れなくなり、胸骨出口部が痛くなります。

③Roosテスト

Wrightテストの状態で、手・指の屈伸を3分間行います。
腕神経叢に圧迫があるときは、腕がだるくなり、指が痺れてきます。
静脈に圧迫がある場合は、上肢が青白くなり、チアノーゼが生じます。

④Edenテスト

両肩を後ろ下方に引っ張り、胸を張ってもらうと脈が触れなくなります。
いずれも、故意に胸郭出口を狭くさせることにより、症状の再現を調べる検査です。

胸郭出口部に存在する斜角筋・鎖骨下筋・小胸筋が、事故受傷により断裂損傷を受ければ、血腫や瘢痕が形成され、結果として血管神経を圧迫することは容易に考えられます。

筋断裂は、断裂局所の疼痛、腫脹、皮下出血、圧痛を示しますので比較的容易にその判断ができます。しかしこれらの筋肉が断裂を起こすのは、相当大きな衝撃が頚部に加えられたときに限ってと考えるべきで、通常の追突事故では、まず考えられません。

治療は保存的療法が中心ですが、本症例に特徴的な上肢の症状を緩和する目的で体格・体質改善が指導されます。長時間のうつむき姿勢での仕事や、重い物の持ち運び等は禁止され、筋力の柔軟性、増強を目的とした運動療法、ウエイト・トレーニングや水泳などが推奨されます。

薬物療法としては筋弛緩剤、循環改善剤、神経機能改善剤、消炎鎮痛剤、精神安定剤の投与が行われます。本症例で手術に発展することは、まずありませんが、治療期間が長期化する特徴があります。

保存療法が優先されますが、我慢できない痛みに対しては、手術療法が検討されます。
胸郭出口を構成している斜角筋切離術や第1肋骨の切除等で、狭窄の軽減をはかりますが、術後の回復は、必ずしも目覚ましいものではありません。

胸郭出口症候群における後遺障害のキモ?

1)胸郭出口症候群の診断基準は、以下の4点です。

  1. 頚部、肩、腕に神経や血管の圧迫症状があり、愁訴が比較的長期間持続・反復すること、
  2. アドソン・ライト・エデンの各テストのいずれかが陽性で、テスト時に愁訴の再現・増悪があること、
  3. 頚椎疾患、抹消神経疾患を除外できること、
  4. MRアンギオ検査で圧迫や狭窄所見が認められること、

圧迫の器質的所見は、鎖骨下動脈の血管造影検査で立証します。

2)どんな交通事故で、胸郭出口症候群を発症するのか?

受傷機転をハッキリと証明できないところが、胸郭出口症候群の泣きどころです。
爺さん会は、「交通事故で胸郭出口症候群を発症することの証明がなされていない。」 
として、後遺障害等級を認定していません。
ほとんどが、頚椎捻挫として14級9号の認定でごまかしています。

第1肋骨の切除術を受けた後も、肩関節の可動域に2分の1以上の制限を残している被害者に対して、12級13号が認定されました。
肩関節に器質的損傷を認めないが、10級10号を否定した理由となっています。
なんとしてでも、胸郭出口症候群としては、後遺障害を認めないぞ! 固く決意している様子です。

ところが、裁判では、胸郭出口症候群を12級13号と認定しています。
2005年8月30日、名古屋地裁は圧迫型のTOSを12級13号と認定、平成2006年5月17日、名古屋高裁もこれを追認しています。
2007年12月18日、東京地裁は、ライトテストのみで立証された胸郭出口症候群に対して12級13号を認定しているのです。

現状では、調査事務所は認定しないが、裁判では、複数が認められている状況です。

3)圧迫型と牽引型の2種類?

胸郭出口症候群には、鎖骨下動脈部で上腕神経叢を圧迫している圧迫型と、受傷時に上腕神経叢が引っ張られる牽引型の2種類が存在しています。
牽引型は、先に上腕神経叢麻痺で学習した軸索損傷もしくは神経虚脱であり、受傷から3カ月を経過すれば、改善が得られるものと思われます。後遺障害として問題となるのは、圧迫型となります。

圧迫型は、器質的損傷を血管造影撮影で立証しています。
ところが、血管造影撮影は、やや危険を伴うものでもあり、治療が目的ではない立証だけでは、治療先の腰が引けてしまう状況で、この検査が中々受けられない問題点があります。

4)治療先について?

①治療先 加納クリニック 

所在地 〒500-8383 岐阜市江添3-8-16
TEL 058-275-8836  080-5126-8836
脳神経外科 加納 道久 医師

②治療先 医療法人社団 誠馨会 セコメディック病院

所在地 〒274-0053 千葉県船橋市豊富町696-1
TEL 047-457-9900(代表)
整形外科 渡邊 公三 医師

私が担当していた被害者の治療先は、上記の2つです。
ネット検索では、北海道整形外科記念病院、筑波大学医学部附属病院 整形外科、関西医科大学付属滝井病院 整形外科などが、胸郭出口症候群のオペを説明しています。

余談ですが、2012年7月1日、東海北陸厚生局は、加納クリニックに対して、保険医登録の取消処分を科しています。処分の内容は、
①実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて虚偽の手術伝票を作成し、保険医療機関に診療報酬を不正に請求させていた。
②保険医療機関以外の場所で診療を行っているにもかかわらず、保険医療機関で行ったとして診療録に不実記載し、保険医療機関に診療報酬を不正に請求させていた。
③算定要件を満たさない入院基本料の診療報酬を保険医療機関に不当に請求させていた。

上記の3つですが、加納医師は、これを不服として、行政処分取消訴訟控訴審中、執行停止の特別抗告中であり、私としては、これ以上のコメントはありません。

加納クリニックにおいては、胸郭出口症候群のオペ実績は1000例以上であり、当方から200名以上の被害者が受診、血管造影撮影により胸郭出口症候群の立証がなされました。
現在も、開業しておられますが、自由診療のみの扱いとなっています。

腰椎の解説
腰椎のCT

CTで、上下の関節突起の中央部が断裂しています。

分離症は、椎弓の一部である上下の関節突起の中央部が断裂しており、連続性が絶たれて、椎弓と椎体、つまり、背骨の後方部分と前方部分が離れ離れになった状態です。
原因は、先天性と後天性があるとのことですが、身体が柔らかい中学生頃に、ジャンプや腰の回旋を繰り返し行うことで、で腰椎の後方部分が疲労骨折したのではないかと推定されており、日本人の5~7%に分離症があると言われています。
ところが、大多数は、分離症があっても、痛みもなく、通常の日常生活を続けています。

ところが、ここに、交通事故です。
交通事故受傷の衝撃が腰部に加わり、椎体が前方向にすべり、分離すべり症となるのです。
分離は、事故前から存在したもので、それを原因としてすべり症となったのです。
分離すべり症のほとんどは、L5に発生しています。

治療は、腰椎コルセットを装用、安静加療が指示されます。
安定期に入ると、腹筋・背筋を強化するリハビリで腰痛の発生を抑えます。
腰痛や神経根圧迫による臀部、下肢の疼痛、間欠性跛行で歩行できる距離が100m以内、膀胱・直腸障害が出現しているときは、神経の圧迫を除去する椎弓切除術、脊椎固定術が実施されます。
手術後の画像
最近では、TLIF片側進入両側除圧固定術が主流となりつつあります。

腰椎分離・すべり症における後遺障害のキモ?

1)素因減額の対象?

事故受傷後のXP検査で分離症の存在を知る被害者が圧倒的です。
つまり、事故前には、これといった支障もなく、普通に日常生活をしていたのですが、画像で分離症が確認されている限り、既往歴と断定されることになります。
椎弓切除術、脊椎固定術が実施されても、脊柱の変形で11級7号が認定されることはありません。

2)痛みの評価は?

保存療法、オペにかかわらず、L5に疼痛を残す被害者では、3DCT、MRIで骨癒合を明らかにして、痛みの神経症状を後遺障害診断書で明らかにしています。
このケースでは、14級9号が認定されています。

強い耳鳴り・難聴・眩暈の訴えをされる頚部捻挫の被害者が、マレにおられます。
頚椎の周辺図
椎骨動脈は鎖骨下動脈から分岐し第6頚椎から第1頚椎の横突孔を走行し、頭蓋内に流入、内耳・小脳・脳幹等の平衡感覚や聴覚に影響を持つ部位に血液を供給しているのです。

交通事故による椎骨動脈の直接の損傷、周囲からの圧迫、あるいは動脈壁に分布して血管の収縮・拡張を調整する頚部交感神経を損傷し、血液の流入先に血行障害を起こしたときは、耳鳴り・難聴・眩暈が発生しても不思議ではありません。

本来は、椎骨動脈造影検査で狭窄や圧迫が確認されて、この病名が立証されたことになるのですが、臨床では、被害者の訴えに眩暈、悪心、嘔吐、目のかすみ、上肢の痺れがあり、首を回転、過伸展したときに、これらの症状が出現するケースで、この傷病名が記載されることがあります。

椎骨動脈の血行障害は、動脈硬化による血管の狭窄、血栓による血管閉塞でも起こります。
軽度のものは先に説明した、バレ・リュー症候群でも、交感神経異常として認められています。

交通事故では、頚椎椎体の骨挫傷、横突起や棘突起の骨折など、頚部に相当大きなダメージを受けたときに、この傷病名が予想されます。
通常の頚部捻挫で、椎骨脳底動脈血行不全症は考えられません。
椎骨動脈造影検査では、動脈の一部が細くなっている、造影剤が見えなくなる所見が得られます。
本症例では、脳神経外科と血管外科の専門医がタッグを組んで、診断、治療に当たります。
血行改善剤の投与、神経ブロック療法、ケースによっては、横突孔の開放術が検討されます。

私の担当する被害者は、ニコリンをメインとし、アデホス、ノイロトロピン、メチコバール、の点滴投与を受けておりました。ニコリンは途中からルシドリールに変わりました。
一定の効果を示したのですが、全快には至りませんでした。

爺さん会、調査事務所は、失調・眩暈および平衡機能障害が立証できれば、3、5、7、9、12、14級の後遺障害等級を認定しています。
しかし、爺さん会の見解は、頭部外傷を原因として、失調・眩暈および平衡機能障害等の症状が認められることであり、限定した条件設定がなされています。

本症例は、先天性の形態異常、動脈硬化を原因とする血管腔の狭小化、変形性頚椎症の場合、骨棘による圧迫等によっても発症します。
私の経験則では、ほとんどが、椎骨動脈の壁に分布する血管運動神経、つまり交感神経の暴走を原因とするバレ・リュー症候群で、椎骨脳底動脈血行不全症とは認められておりません。

椎骨脳底動脈血行不全症における後遺障害のキモ?

1)椎骨脳底動脈血行不全症の立証は、神経内科における椎骨動脈造影検査で行います。

椎骨動脈の血流低下が立証されたときは、耳鼻科で失調・めまい・平衡機能障害の検査を受けて、めまいなどのレベルを立証します。

2)失調・眩暈及び平衡機能障害の後遺障害等級

失調・眩暈及び平衡機能障害の後遺障害等級
3級3号 生命の維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために終身労務に就くことができないもの、
5級2号 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下し一般平均人の4分の1 程度しか残されていないもの、
7級4号 中程度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の 2 分の 1 以下程度に明らかに低下しているもの、
9級10号 一般的な労働能力は残存しているが、眩暈の自覚症状が強く、かつ、他覚的に眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められるもの、
12級13号 労働には差し支えがないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの、
14級9号 眩暈の自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの、

3)後遺障害の対象とは

先にも説明していますが、爺さん会は、頭部外傷を原因とした失調・眩暈および平衡機能障害を後遺障害の対象としています。
ところが、椎骨脳底動脈血行不全症は頚部の外傷であり、上記からは外れているのです。
本部稟議で協議の対象となりますが、非該当の結論も予想されます。
そんなときは、交通事故の解決に長けた弁護士による訴訟解決を選択することになります。
有能な弁護士は、交通事故110番でご紹介できます。