このページでは、交通事故の後遺障害等級認定における原則と準則の適用方法のうち、「相当」の取扱について事例を元に解説します。

後遺障害等級における「相当」とは

後遺障害等級表に掲げるもの以外の後遺障害については、自賠法施行令2条別表第一備考、別表第二備考6で、その後遺障害の程度に応じて等級表に掲げる後遺障害に準じて定めるとされています。

事例1「嗅覚と味覚」

後遺障害等級表のいかなる後遺障害の系列にも属さないもの→嗅覚と味覚の障害

  • 12級相当 嗅覚を脱失したもの
  • 14級相当 嗅覚を減退したもの
  • 12級相当 味覚を脱失したもの
  • 14級相当 味覚を減退したもの

試食している女性の絵
嗅覚脱失および味覚脱失は、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に準じて12級相当、嗅覚の減退および味覚の減退は、14級9号「局部に神経症状を残すもの」に準じて14級相当として認定されています。

事例2「肩関節用廃・手関節可動制限」

私の妻ですが、自転車VS自動車の交通事故で、右上腕骨開放性破裂骨折となり、右肩関節の用廃で8級6号が認定される見込みです。加えて、右手のTFCC損傷で右手関節の可動域に2分の1以下の制限が認められます。
このケースでは、繰り上げで併合7級が認定されるでしょうか?

本件の質問は、後遺障害の系列は存在するが、該当する後遺障害等級がない例に該当します。
右肩関節の用廃は8級6号、右手関節の著しい機能障害は10級10号ですから、2つは併合され、併合7級が認定されます。併合7級であれば、序列を乱すことはありません。

事例3「親指関節用廃・人差し指切断」

自動二輪車でツーリング中、山間部の道路でセンターラインオーバーのトラックと衝突、交通事故に遭い、右親指のIP関節の用廃、右人差し指は第二関節から切断となりました。
この場合の併合等級をお教えください?
手の骨格図
右親指の用廃は10級7号、右人差し指の切断は10級6号となります。
これらを併合すると、併合9級となるのですが、8級4号「一手の親指および人差し指の用廃」よりは重く、7級6号「一手の親指および人差し指を失ったもの」よりは軽い、つまり、序列修正が必要な局面となります。
結果、併合9級ではなく、8級相当が認定されます。

本件では、直近上位の等級が相当として認定されたのですが、切断と用廃では、両上下肢におよばない限り、序列では切断が上位となります。
この理解が得られていないと、上記の相当級は判断できません。

事例4「上肢の複合損傷」

息子が仕事中の追突事故で崖下に転落し、上腕神経叢麻痺で左肩関節と左肘関節の用を廃しました。左手関節はかろうじて動かせる状況にありますが、右手関節に比較して2分の1以下に制限されています。親の私から見れば、左上肢は使い物にならない状況ですが、この場合、なん級が認定されるのでしょうか?

通常の併合で考えると、上腕神経叢麻痺による2関節の用廃は6級6号に該当します。
左手関節は2分の1以下の制限ですから、10級10号に該当します。
これらの2つを併合すると、併合5級となるのですが、5級5号「一上肢の用を全廃したもの」にはおよびません。序列調整が行われ、直近下位の等級、6級相当が認定されることになります。

事例5「手指の複合損傷」

バイク同士の交通事故で、左手指を挟まれ、左中指についてはPIP関節の用廃、左小指については、PIPから先を切断しました。
この場合、なん級が認定されますか?

中指の用廃は12級10号、小指の切断は12級9号が認定されます。
これを併合すると、併合11級となりますが、10級6号「一手の親指および人差し指以外の2指の用を廃したもの」よりは重く、9級12号 「一手の親指または親指以外の2の手指を失ったもの」よりは軽い、つまり、序列修正が必要な局面となります。
結果、併合11級ではなく、10級相当が認定されます。

同一系列に属する複数の後遺障害では、併合の方法により等級が認定されています。
事例2から5については、併合の方法を用いた結果、後遺障害の序列を乱すことになり、併合等級の直近上位、直近下位の相等級とすることを説明したものです。

事例6「右上肢の複合損傷」

夫が軽四輪トラックを運転中、ダンプカーに追突され民家に激突、飛び込みました。ダンプの居眠り運転が交通事故の原因です。
受傷から9ヵ月を経過、夫は、右上腕骨開放性複雑骨折で肩関節は用廃となり、右橈尺骨遠位端開放性骨折で右手関節に著しい機能障害を残し、さらに右親指の第一関節を切断しています。
この場合、夫の後遺障害は、なん級が認定されるのでしょうか?

右肩関節の用廃は8級6号、右手関節の著しい機能障害は10級10号、そして親指の喪失は9級12号となります。通常のルールに従って併合すると併合7級となりますが、これは間違いです。
右肩関節の用廃8級6号と右手関節の10級10号を併合して、7級相当とします。
これに右親指の亡失9級12号を併合して6級相当とするのが正解です。

事例7「全右手指切断・手関節用廃」

事例6とよく似た交通事故状況で、右手指5本を切断、右手関節の用を廃した被害者から相談を受けたことがあります。先のルールに従えば、等級は、なん級が認定されるでしょうか?

右手指の5本の喪失は6級8号、右手関節の用廃は8級6号です。
併合のルールであれば、上位等級が2つ繰り上がり、4級相当となりますが、5級4号「一上肢を手関節以上で失ったもの」には達しません。
序列調整により、直近下位の6級相当が認定されます。

上記の2つは、本来は異系列のものを同一系列として取り扱っています。
序列調整では、直近上位と直近下位の認定が行われています。